映画『負け犬の美学』 | 普通人の映画体験―虚心な出会い

普通人の映画体験―虚心な出会い

私という普通の生活人は、ある一本の映画 とたまたま巡り合い、一回性の出会いを生きる。暗がりの中、ひととき何事かをその一本の映画作品と共有する。何事かを胸の内に響かせ、ひとときを終えて、明るい街に出、現実の暮らしに帰っていく…。

2018年11月6日(火)シネマカリテ(東京都新宿区新宿3-37-12 新宿NOWAビルB1F、JR新宿駅東南口および中央東口より徒歩2分)で、21:15~鑑賞。

「負け犬の美学」

作品データ
原題 SPARRING
製作年 2017年
製作国 フランス
配給 クロックワークス
上映時間 95分


『アメリ』への出演や『憎しみ』の監督として知られるマチュー・カソヴィッツが落ち目の中年ボクサーを熱演したフランス製ヒューマンドラマ。ピークを過ぎたボクサーが娘の夢を叶えるため奮闘する姿を描く。共演にミュージシャンのオリヴィア・メリラティ、元WBA世界スーパーライト級王者のソレイマヌ・ムバイエ、これからのフランス映画界を担う新星ビリー・ブレイン。監督は本作が長編デビューとなるサミュエル・ジュイ。

ストーリー
40代半ばを迎え、盛りを過ぎたプロボクサーのスティーブ(マチュー・カソヴィッツ)。たまに声のかかる試合とバイトで家族を何とか養っていたが、ピアノを習ってパリの学校に行きたいという娘オロール(ビリー・ブレイン)の夢を叶えたい一心で、誰もが敬遠する欧州チャンピオン、タレク(ソレイマヌ・ムバイエ)のスパーリングパートナーになることを決意する。彼はチャンピオンの強烈なパンチを受け続け、ボロボロになりながらも何度でも立ち上がり、スパーリングパートナーをやり遂げた。すると、チャンピオンからある提案が舞い込んでくる。スティーブは愛する家族のため、そして自分自身の引き際のために、最後の大勝負に出る。引退試合のリングで父として娘に伝えたかった思いとは…。

▼予告編



私感
オロール・ランドリー(ビリー・ブレイン)の、父スティーブ・ランドリー(マチュー・カソヴィッツ)に向ける、無垢な眼差しと天使のような笑顔が、私という観客を魅了する!

ショートヘアにボーイッシュな服装と一見すると美少年のような出で立ちをしたオロール・ランドリー。そんなスティーブの愛娘オロール役に扮した新星ビリー・ブレイン(Billie Blain)について、サミュエル・ジュイ(Samuel Jouy、1975~)監督はこう語っている。
≪オロール役を選ぶため、少なくとも200人の少女を見たよ。最終的に3人の候補にしぼり、その中から決めようとしていたが、ある夜遅くにキャスティングディレクターが電話をかけてきて、素晴らしい少女に出会ったと言ったんだ。演技テストを見て、すぐにこの子だと思った。他の3人の少女も素晴らしかったのだが、ビリーは特別だった。息づかいが違った。僕の目の前には、セリフを話す子役ではなく、血肉の通った一人の人間がいたんだ。それにビリーには、映画のラストを飾るあの素晴らしい笑顔があった。≫「負け犬の美学」公式サイト ABOUT THE MOVIE/INTERVIEW