映画『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』 | 普通人の映画体験―虚心な出会い

普通人の映画体験―虚心な出会い

私という普通の生活人は、ある一本の映画 とたまたま巡り合い、一回性の出会いを生きる。暗がりの中、ひととき何事かをその一本の映画作品と共有する。何事かを胸の内に響かせ、ひとときを終えて、明るい街に出、現実の暮らしに帰っていく…。

2018年4月24日(火)新宿ピカデリー(東京都新宿区新宿3-15-15、JR新宿駅東口より徒歩5分)で、18:30~鑑賞。

作品データ
原題 THE POST
製作年 2017年
製作国 アメリカ
配給 東宝東和
上映時間 116分




スティーヴン・スピルバーグ監督のもとで、メリル・ストリープとトム・ハンクスという2大オスカー俳優が初共演を果たした社会派実録ドラマ。ベトナム戦争が泥沼化し、アメリカ国内に反戦の気運が高まっていた1971年、時の政権がひた隠す“都合の悪い真実”を明らかにすべく奔走したジャーナリストたちの命懸けの戦いを描写する。『コンテンダー』のサラ・ポールソン、『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』のボブ・オデンカーク、『シェイプ・オブ・ウォーター』のマイケル・スタールバーグ、『デビルズ・ノット』のブルース・グリーンウッドらが出演。

ストーリー
1966年、ベトナム視察からアメリカへ戻る国防長官ロバート・マクナマラ(ブルース・グリーンウッド)に、泥沼化するベトナム戦争について報告した男の姿があった。しかし、メディアから「アメリカの勝利への展望」について聞かれると、マクナマラは「飛躍的に進展している」と答える。
その後、男=ダニエル・エルズバーグ(マシュー・リース)は、自らがアナリストを務めるランド研究所から文書を持ち出し、コピーをする。タイトルは「アメリカ合衆国のベトナムにおける政策決定の歴史」。そのすべてに“トップシークレット”の記載…。
1971年、ワシントン。夫が自殺したため、ワシントン・ポストの発行人・社主となって数年のキャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)。社の株式公開を控え、書類作業に没頭するキャサリンだったが、経験が浅く、会長であるフリッツ・ビーブ(トレイシー・レッツ)が代わりに発言することも多い。それでも、男性優位の社会の中で、礼儀正しさを保ちながらも筋を通すやり方を心がけていた。ポストの編集主幹、ベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)との朝食会へ出かけたキャサリンは、リチャード・ニクソン大統領の娘の結婚式の取材からポストの記者が拒否されたと告げる。加えて女性の読者が減っていると話すが、指図をするのはやめてくれとベン。ニューズウィーク誌からキャサリン自身が引き抜いたベンは、編集方針に口を出されることを嫌っていた。しかし社主として、一人の人間としてキャサリンを認めていた。
ベンはニューヨーク・タイムズの敏腕記者、ニール・シーハンが姿を見せないことに気づき、近々タイムズにスクープが掲載されるのでは、と危惧する。その予感通り、タイムズの編集局長エイブ・ローゼンタール(マイケル・スタールバーグ)の元へシーハンから極秘の記事が届けられる。
タイムズに掲載されたのは、ベトナム戦争に関する調査報告書の一部。そこには4人の大統領、トルーマン、アイゼンハワー、ケネディ、ジョンソンが、ベトナム戦争に関する嘘をつき、マクナマラは1965年にはすでにこの戦争に勝てないことを知っていたことが明かされていた。ニクソン大統領はタイムズが機密保護法に違反していると激怒し、厳罰に処すよう指示を出す。
タイムズに負けじと、ポストの記者たちは文書入手のために動き出す。ポストを一流紙へと押し上げたいベンは、古くからマクナマラと友人付き合いがあるキャサリンに、マクナマラから文書をもらうよう説得するが、彼女はそれは犯罪行為だと拒否する。
しかし、以前ランド研究所に勤めていたポストの記者、ベン・バグディキアン(ボブ・オデンカーク)が元同僚のエルズバーグと接触し、文書のコピー7000ページ以上を受け取ったことで事態は急変する。掲載すれば、タイムズ同様にポストは罪に問われ、株式公開ができなくなる可能性が高い。
会社の存続を第一に考えるフリッツやその他役員たちは掲載に反対するが、ベンは言う、「報道の自由を守るのは報道しかない」。その“報道の自由”は、キャサリンの、社主としての、そしてジャーナリストとしての決断に委ねられていた…。

▼予告編



▼特別映像 ”新たな時代” :



▼特別映像 “The Craft” :



▼特別映像 メリル・ストリープ×トム・ハンクス


【2大オスカー俳優メリル・ストリープ(Meryl Streep、1949~)×トム・ハンクス(Tom Hanks、1956~)。2018年現在、ストリープはアカデミー賞で俳優としては史上最多となる21回ノミネートされ、その内、『クレイマー、クレイマー』(1979年)で助演女優賞、『ソフィーの選択』(1982年)と『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』(2011年)で主演女優賞を受賞。また、ハンクスは同賞で5回ノミネートされ、その内、『フィラデルフィア』(1993年)と『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994年)で2年連続、主演男優賞を受賞。私はこれまでに、(記憶の糸をたどると)ストリープの出演作については前掲のアカデミー受賞3作を含む少なくとも20作以上を、ハンクスの出演作については前掲のアカデミー受賞2作を含む少なくとも15作以上を鑑賞した。ストリープ、ハンクス二人とも、折り紙付きの優れた演技力の持ち主。本作でも私は二人の登場シーンを、終始ゆったりと安心した面持ちで、ひたと見入ることができた。とりわけキャサリン(ストリープ)が経営(会社存続)か報道の自由かの間で難しい判断を迫られたとき、当たり前のように後者を選択する場面が圧巻だった。夫亡き後、新聞社を引き継ぎ、無能で社交好きな女性オーナーと蔑まれ、差別されて来た彼女が、あっさりと「ペンタゴン・ペーパーズ」掲載を即決する…。それは場面が場面だけに、観る側としては肩透かしを食らうほどに実に軽妙にして味わい深い演技だった。】