作品データ :
原題 I, DANIEL BLAKE
製作年 2016年
製作国 イギリス フランス ベルギー
配給 ロングライド
上映時間 100分


2016年・第69回カンヌ国際映画祭で、『麦の穂をゆらす風』(2006年)に続く2度目の最高賞パルム・ドールを受賞した、イギリスの名匠ケン・ローチ監督作品。イギリスの煩雑な制度に翻弄され、人としての尊厳を踏みにじられ貧困に苦しみながらも、助け合って生きる人びとの姿~ダニエルとケイティ親子との心の交流~が描かれる。一貫して社会問題に目を向けてきたケン・ローチ(Ken Loach、1936~)は、『ジミー、野を駆ける伝説』(2014年)(cf. (本ブログ〈February 14, 2015〉)を最後に映画界からの引退を表明していたが、現在のイギリス、そして世界中で拡大しつつある格差や貧困にあえぐ人々を目の当たりにし、その宣言を撤回、<今、だからこそ>どうしても全世界に伝えたいメッセージとして本作を製作した。
ケン・ローチの言葉(本作公式サイトhttp://www.longride.jp/danielblake/) : “生きるためにもがき苦しむ人々の普遍的な話を作りたいと思いました。死に物狂いで助けを求めている人々に国家がどれほどの関心を持って援助をしているか、いかに官僚的な手続きを利用しているか。そこには、明らかな残忍性が見て取れます。これに対する怒りが、本作を作るモチベーションとなりました。”
大工一筋の59歳の主人公ダニエル・ブレイクには、イギリスの人気コメディアンで、本作が初の映画出演となるデイヴ・ジョーンズ。彼の父親が建具工で労働者階級の出身だったことから、何よりもリアリティを追求するケン・ローチ監督に大抜擢された。シングルマザーの27歳のケイティ・モーガンには、デイヴと同じくオーディションで選ばれた、『ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出』のヘイリー・スクワイアーズ。どんな運命に飲み込まれても、人としての尊厳を失わず、そばにいる人を思いやる二人の姿は、観る者の心に深く染みわたる。
ストーリー :
イングランド北東部にある町ニューカッスルに住む大工のダニエル・ブレイク(デイヴ・ジョーンズ)。妻に先立たれた59歳の彼は突然、心臓の病に襲われ、医師から仕事を止められてしまう。国の援助を受けようとするが、複雑な制度下の頑迷なお役所仕事が立ちふさがり、なかなか必要な援助を受けることができない。ひたすら右往左往し人間の尊厳さえも奪われようとするダニエルだったが、同じように苦境に陥っていたシングルマザーのケイティ(ヘイリー・スクワイアーズ)とその二人の子供たち~10歳の娘デイジー(ブリアナ・シャン)と7歳の息子ディラン(ディラン・マキアナン)~と偶然出会ったことから、思いがけない交流が生まれる。貧しいなかでも寄り添い合い、かすかな希望を取り戻していくダニエルとケイティたち。しかし、そんな彼らは、容赦ない目前の現実によって次第に追い詰められていく…。
▼予告編
▼「80歳の巨匠ケン・ローチ - 弱者に寄り添う老監督/新作に込めた“怒り”」(NHKテレビ「ニュースウオッチ9(NW9)」2017年3月14日放送回) :
Cf. NW9 番組概要[特集(ニュース)- 2017年3月14日21:31~21:39] https://tvtopic.goo.ne.jp/kansai/program/nhk/201/579541/:
≪スコセッシやコッポラなど数々の巨匠が受賞してきたカンヌ映画祭の最優秀賞・パルムドーム。去年、二度目の栄冠に輝いたのが80歳のケン・ローチ監督。半世紀にわたって労働者や移民といった弱い立場の人たちに寄り添う作品を発表してきたケン・ローチ監督が受賞作「わたしは、ダニエル・ブレイク」で描いたのは社会への怒りだった。作品ではやむを得ない事情で仕事を失いながら行政のセーフティネットからこぼれ落ち、苦しむ人々の現実が描かれている。
半世紀に及ぶ監督人生で30本の映画を撮ってきたケン・ローチ監督。今回の作品は一時発表した引退を撤回して制作した。ケン・ローチ監督の映画づくりの特徴は徹底したリアリズム。今回も国内8都市で貧困の現場をリサーチした。取材に対し監督は、「イギリスでは50万人をはるかに超える子どもたちが慈善団体から食料をもらわなければ食べることさえできない」とコメントした。
ケン・ローチ監督の弱者への眼差しを高く評価しているのが山田洋次監督。取材に対し、「ケン・ローチの映画は日本にきたものはほとんど見ているつもりだが、その中でも群を抜いてすばらしいと思った。徹底的に貧しい人が常に主人公。なぜ一生懸命働いてきて俺はこんなに世間から蔑まれて生きなければいけないのだろうか。もう少し俺に敬意を持ってほしいというのは苦しい思いをして生きている人たちにとてもふさわしい言葉」とコメントした。
弱者に寄り添って映画を撮り続けてきたケン・ローチ監督。引退を撤回してまで伝えたかったメッセージについて、「すべての人には尊厳をもって扱われる権利がある。伝えたかったのはこんな状況は許されないということ。歴史は変わる。今は負けているかもしれないがまだ試合は終わっていない」とコメントした。
ケン・ローチ監督についてトーク。河野憲治は、「格差社会の問題というのは世界共通の課題になっている。そうしたことも今回の作品が世界各地の映画祭でいろんな賞を受賞している理由になっているのかもしれないと思います」とコメントした。≫