映画『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY』 | 普通人の映画体験―虚心な出会い

普通人の映画体験―虚心な出会い

私という普通の生活人は、ある一本の映画 とたまたま巡り合い、一回性の出会いを生きる。暗がりの中、ひととき何事かをその一本の映画作品と共有する。何事かを胸の内に響かせ、ひとときを終えて、明るい街に出、現実の暮らしに帰っていく…。

2018年1月25日(木)「ココロヲ・動かす・映画館○(東京都武蔵野市吉祥寺本町1-8-15、JR吉祥寺駅北口徒歩約5分)で、16:30~鑑賞。

作品データ
表題 THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY ― リミット・オブ・スリーピング ビューティ- 
製作年 2017年
製作国 日本
配給 アーク・フィルムズ
上映時間 89分




「SLUM-POLIS」などの自主映画で注目を集めてきた二宮健監督が、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2015で審査員特別賞を受賞したインディーズ作品『眠れる美女の限界』を、商業映画デビュー作としてセルフリメイク。サーカス団でマジシャンの助手を務めるヒロインが、妄想と現実の境界をさまよう姿を描く。主演は『フローレンスは眠る』などの桜井ユキ。彼女の恋人をTVドラマ「民王」シリーズや『blank13』などの高橋一生が演じるほか、成田凌、山谷初男、満島真之介らが共演する。

ストーリー
小さなサーカス団でマジシャンの助手をしている29歳のオリアアキ(桜井ユキ)。女優を夢見て上京して10年。サーカスに入団した頃は若く美しかった彼女も、30歳を目前に、生きる目標を見失い、モラトリアムな日々を過ごしていた。ルーチンワークのように繰り返されるのは、催眠術にかかるという演技。体を浮かされ、剣に刺され、催眠状態を演じているうちに、やがてアキの精神は徐々に摩耗し、いつしか現実と妄想の境界が破綻を迎えようとしていた。何故生きるのか?何を夢見たのか?何を目指すのか?自分が生きてきた人生の過去の疑問と屈折ばかりがアキの中を駆けめぐる。唯一、アキの中で美しい思い出として残るのは、恋人・カイト(高橋一生)との時間だった。そして、二つの世界の境界が壊れるとき、アキの人生の再生が始まる…。

▼予告編



私感
本作のオフィシャルサイトhttp://sleepingbeauty-movie.com/ のINTRODUCTIONによると、
≪映画界が大注目する若き才能が作り上げた作品は、かつて誰も見たことがないほど挑発的で衝撃的。/正に商業映画界に奇襲を仕掛ける作品が誕生した。/現実と妄想の目まぐるしい交錯を描く本作の脚本を手掛けたのも二宮健。緻密に構成された交錯劇が、否応もなく観るものを別世界へといざなう。/若干25歳の若手監督・二宮健は、中学時代から40本以上の自主映画を作りつづけ、『SLUM-POLIS』(15)、『MATSUMOTO TRIBE』(17)など、発表される作品が立て続けに注目を浴び、本作が満を持しての商業映画デビュー作となる。/過去と現在、現実と妄想。/観る者を縦横無尽の世界に引き込み、その視線をはずさせない力強い映像で綴るのは、人間の根源に迫る骨太のヒューマンドラマ。そして、オリジナル脚本と緻密な映像で見せる高揚感に満ちた世界観は、絶望の先に見える新世界を予感させる。≫

( ´,_ゝ`) プッ、言いも言ったり!
映画界が大注目する若き才能…、かつて誰も見たことがないほど挑発的で衝撃的な作品…、現実と妄想の、緻密に構成された、目まぐるしい交錯劇が、否応もなく観るものを別世界へといざなう…、絶望の先に見える新世界を予感させる、人間の根源に迫る骨太のヒューマンドラマ…。
ここには、例によって例のごとく、必要以上に誇大に伝える日本映画業界特有の宣伝文句(美辞麗句)が並んでいる(cf. 本ブログ〈September 18, 2015〉 本ブログ〈November 15, 2015〉 )。

これは、問題外のB級映画である。
映像、音楽、プロットすべて、手垢にまみれた、どこかで聞いたもの、見たようなものばかり。新しい発見のない既視感を覚えるイメージの連続!鋭く切り込まれ、深堀りされたテーマは一切なし!俳優たちの演技に引き込まれて心に残るようなシーンも見いだされず!
本作のキャッチフレーズは、何と「オリアアキ29歳―それでも世界は、素晴らしい。」 観るに堪えない空疎なものに何たる惹句、まさに噴飯のいたり!

それはともかく、私が今回初めて入館した「ココロヲ・動かす・映画館○」について触れておきたい。
同館(通称ココマルシアター〈COCOMARU THEATER〉)は、「ココロヲ・動かす・映画社◯」が運営する3階建てシアター&カフェで、昨年10月21日(土)、吉祥寺にグランドオープン。COCOMARU THEATERが新設され開業中である事実を私自身が初めて知ったのは、今年1月中旬になってからのこと。早速、逸(はや)る心を静めながら、同館に足を運び、1F映画館(34席)で今回の映画(『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY ― リミット・オブ・スリーピング ビューティ-』→『女神の見えざる手』の2作)鑑賞となった(此度〈こたび〉のココマルシアター行きは、『女神の見えざる手』鑑賞を目的とするものだったが、たまたま時間潰しに『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY』を観た次第)

吉祥寺~「サン・ロード」というアーケード商店街の北端~には、かつて私が頻繁に出入りした「吉祥寺バウスシアター」という老舗映画館~前身は1951年に開館した「ムサシノ映画劇場」~が存在した。幅広い作品(ロードショー+単館系作品)を上映し、落語や音楽ライブなども行なう劇場型シアターとして多くの市民に親しまれた同館も、はなはだ残念なことに、2014年6月10日をもって閉館、「63年」の歴史に幕を下ろした(cf. ブログ〈「映画」再訪〉記事〈映画『ラブリーボーン』〉)。
下矢印 cf. 吉祥寺バウスシアター~地域情報動画サイト「街ログ」(2008/05/07 )

下矢印 cf. 吉祥寺バウスシアター ~2014年3月の時点の画像

  (チケット売り場)                          (入り口)

  (サンロード側から見たところ)                 (上映中の『ロボコップ』『ネブラスカ』『MUD マッド』ポスター) 
私は『MUD マッド』(2013年、ジェフ・ニコルズ監督)を2014年3月6日(木)13:00~に、『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』(2013年、アレクサンダー・ペイン監督)を同年同月15日16:10~に、『ロボコップ』(2014年、ジョゼ・パジーリャ監督)を同年同月同日18:30~に、それぞれ鑑賞。ちなみに、私が同館で最後に観た映画は『ブルージャスミン』(2013年、ウディ・アレン監督)で、2014年5月14日(水)16:45~のこと。

COCOMARU THEATERの公式サイト https://www.cocomaru.net/の「劇場案内」によれば、≪映画を観終わったあとの感想会や、新鋭映画監督を支援する自主映画企画発掘イベントなど、様々な試みに挑戦していきます。上映ラインナップは、ココロヲ・動かす・映画社○配給作や話題のロードショー作品。さらに企画特集上映なども行います。≫
また、同サイトの「支配人から皆様へ」によれば、≪子供のころから夢だった小さい映画館が実現しました。映画は私にとって人生そのものです。それをみんなで共有して、好きなもの同士感想を言い合える場所がほしかったんです。この映画館のコンセプトは、「いい作品との出会い、感動の出会い、人との出会い」です。/また、以前西荻窪に住んでいて、自分が20代の落ち込んでいるときに、バウスシアターや井の頭公園のゾウのはな子によって勇気づけられたことがありました。そうした過去もあり、カルチャーの街だった「吉祥寺」が今ちょっと寂しくなっているので、「映画館をこの街に」ということはこだわりがありました。今回、バウスシアターの本田様はじめ、関係者の方々にもご協力いただけたのは大変感謝しております。/この映画館が、業界の発展に貢献し、吉祥寺の街の良さを伝えていく発信地の一つとなればと願っています。≫

ココマルシアターという「こぢんまりとした映画館」には今後、吉祥寺バウスシアターの正当な後継者の地歩を固めることが期待される。私はひたぶるに願ってやまない。同館が取り扱うべき映画作品は、可能なかぎり吉祥寺バウスシアターの上演作に勝るとも劣らない、観客を思い切り多角的に楽しませる諸作品~佳作・傑作・名作・力作・労作・快作・問題作~であってほしい、と。

下矢印コロヲ・動かす・映画館○