当事者研究の理念「人と事を分ける」
当初、「人と問題を分ける」と表記されていたこの理念。
問題視されたときだけでなく、褒められたときもそうではないかと、「事」という中立的な単語に変わりました。
これは、当事者研究ミーティングの最中、当事者の意見からとられたものです。
彼女は、以上のようなことを言ったわけですが。
問題視されたときに本人を主人公の座に引き戻すための「分ける」(外在化)は、本人をエンパワメントし勇気づけ力を再度発揮してもらうための支えです。
褒められたとき、何故「分ける」必要があるのか。
それは自己評価のアップダウンに関わります。
褒められて、「自分がすごいんだと思われている!」と感じるときは、「過大評価」率が上がるのではないでしょうか。それは褒められ頻度が変わるたびに変動相場制になってしまうという危険をはらんでいます。
実は、褒められたことを、自分の成した「事」が役立った、と捉えるのは、謙虚な姿ですが、着実な「自尊心」を上げる契機です。
「事」の積み重ねが関係性を作り、自己イメージを作り、社会構造を作り上げます。それらは有機的なつながりを揺蕩いながら持ち続けるネットワークです。
「事」へ対する尊重が抜けて、「個人」にすべて集中するとき、「個人の責任」が糾弾され、または「肥大した過大評価」に安住します。
「事」は我が手を離れたときから、揺蕩っているネットワークの細部まで駆け抜けて行きます。そのはたらきに対し尊重を持つことが、自分という境界線をはっきりとさせ、日々の順調な(!?)山あり谷ありの人生にじわりと感じる達成感へ通じます。
ようやく生まれた小さなタネのような達成感こそが、エンパワメントであり自尊心の底上げです。
この理念は、「個人」ありきではない、「事」に対する尊重というスタンスの大切さを再確認させる理念です。
(katsuko.)