はじめまして。心理カウンセラーの 高緑ひろみ です。
主にアダルトチルドレンの方の心理カウンセリングを行っています。
アダルトチルドレンとは、子どもの生育に悪影響を与える機能不全家族のもとで育ち、成長してもなお、精神的にその影響を受け続ける人々のことです。
あなたが何故かわからないけど上手くいかないなぁとか、生きづらいなぁと感じているなら、もしかしてアダルトチルドレンかもしれません。
本日は、「人生がうまくいかないのは、全て自分が悪いのか?」について考えてみたいと思います。
私は最近、2021年放送のテレビドラマ「最愛」をネットで観て思いました。
人生には様々な要素が絡み合って、その結果様々な出来事が起こるのだなと。
当たり前と言えば、当たり前のことですが、現代は全てを「自己責任論」で解決しようとする傾向があると感じています。
そもそも、人生がうまくいかないのには、どのような理由があるのでしょうか?
- 生まれた時代
- 生まれた国(国家体制など)
- 生まれた地域
- 生まれた家(親兄弟姉妹、一族など)
- 生まれた民族
- 生まれた地域の宗教
- 生まれた階層
- 生まれた性別
- 生まれ持った能力
- 生まれ持った資質や性質
- 生まれ持った障害(身体・知的・精神)
- 育つ環境
- 出会う人間(友人知人、指導者など)
- 戦争
- 事故やトラブル
- 老い
- 病気
- 自然災害
- 死
- 大事なタイミングでの幸運・不運
など。
ほとんどのことは、自分ではどうにもならないことばかり。
日々の出来事は、このような多くのことが絡み合って、その結果が現象として現れます。
自分の手持ちのカードを最大限活かしながら、想定外の出来事に対応していくしかありませんよね。
エリートと呼ばれる人たちが、自分よりも成功していない人たちに対して、「成功できないのは努力が足りないからで自己責任だ」と主張している記事を見かけました。
今、目の前にある出来事は、本当に自分の力だけで成し遂げたものなのでしょうか?
運も実力のうちだと聞いたことがありますが、運は本当に自分の実力だけで引き寄せられるものなのでしょうか?
経済開発機構(OECD)の調査では、低所得者層の子どもが平均所得者層に達するのに、平均で少なくとも5世代または150年かかると報告されています。
北欧諸国では2〜3世代、新興諸国の中には9世代以上かかる国もあるそうです。
富裕層や支配者の人たちが、宗教や法律を駆使して利権を独占し、社会的流動性が損なわれれば、さらに長きにわたって低所得者層の人たちは平均所得者層に達する機会を失います。
また、自然災害も年々増加し、平均所得者層だった人たちが低所得者層となるケースも、これから増加していくかもしれません。
この現象は、資本主義社会だからこそですが、危険な仕事や人が嫌がる仕事を安い賃金でやってくれる人たちがいるからこそ、富裕層が存在するのです。
低所得者層の人たちの不満を「自己責任論」で片づけてしまうようでは、革命や内戦、戦争はこれからもきっと無くならないでしょう。
つまり、エリートの人たちの認識は、狭い世界の中で見えている価値観に過ぎないのです。
成功している人たちは、自分たちがいかに恵まれた環境に身を置いているかを知り、たくさんの低所得者層の人たちの犠牲のおかげで、成功を掴んでいることをわかっていただきたいと私は思います。
かつてのインドのカースト制度は、一生奴隷者層(下位カースト)の人たちが居てくれたからこそ、奴隷者層以外(上位カースト)の人たちは、安心して暮らしてこられたのです。
<上位カースト>
① ヴァラモン(司祭)
② クシャトリヤ(王侯・士族)
③ ヴィシャ(庶民)
<下位カースト>
シュードラ(奴隷民)
<アウト・カースト>
ダリット等(不可触民)
インドのカースト制度は、紀元前1500年頃〜1950年の憲法制定にいたるまで、約3,450年間続きました。
カースト制度が、上位カーストの人たちにとって、「どれだけ自分たちに都合のよい制度だったか」がわかるというものです。
成功者たちや権力者たちが主張している「自己責任論」は、薄っぺらい傲慢な思想だと私は思います。
そこで、今回ご紹介したいのが、仏教の「縁起」という考え方です。
そもそも、目の前で起こっている出来事は、「起こすのではなく、起きるもの」と考えます。
さまざまな原因(因)や条件(縁)が相互に関係しあって、すべてのものが存在していると考えるのです。
逆に、いろいろな原因や条件が無くなれば、その結果もおのずから無くなると考えます。
条件が整って結果が生じることを「縁起」といいます。
つまり、原因はきっかけにすぎず、良い条件が整えば良い結果が生じ、良い条件が整わなければ良い結果は生じないということです。
そして、自分の力でどうにかなるものと、自分の力ではどうにもならないものを確認し、自分を見失わないようにすることが大切です。
人間が幸運と呼んでいるものは、実は「たまたま条件が整っただけ」なのかもしれません。
そう考えれば、傲慢になることもないですし、その結果その人は、周囲の人々に愛されるのではないでしょうか。
周囲の人々に愛されることが、目に見えない条件を整え、良い結果を引き起こす要因になるのではないかと私は思います。
誰だって富裕層の人たちのような生活を送りたいですよね。
でも、現実は自分の力ではどうしようもない宿命を背負って、私たちは一生懸命生きるしかありません。
宿命は変えられないし、自分の力で変えられないものは、この地球上にたくさんあります。
アダルトチルドレンの皆さまは、すべてのできごとを「自分で起こした」と考え、自分を責めてしまうことが多いのではないでしょうか?
ですが、多くの出来事は、「縁起」によって生まれているのです。
自分が一生懸命頑張ったなら、自分に「よく頑張ったね」と言ってあげましょう。
そして、自分にとってラッキーな出来事があったら、「たまたま良いご縁(条件)があったのかもね」とつぶやきましょう。
経済的に豊かに生きることと、精神的に豊かに生きることは、重なってはいても同じではありません。
どちらも大切ですが、私は仲間の笑顔を見ることが豊かに生きることだと感じています。
私たちの人生は、たまたまの連続です。
日本人には、この素晴らしい人生観がすでにそなわっていると信じています。
エリート層の人たちの言動に惑わされず、この素晴らしい「縁起」の考え方を思い出して、胸を張って生きていきましょう。
頑張った自分に感謝して、たまたまの良きご縁(条件)に感謝して、支えてくれる人たちに感謝をすれば、きっと晴れやかな気持ちで明日も生きていけると思う今日この頃です。
【参考文献】
“社会的流動性の機能不全に対処する行動が必要.” OECD,
https://www.oecd.org/tokyo/newsroom/action-needed-to-tackle-stalled-social-mobility-says-oecd-japanese-version.htm. Accessed 16 September 2023.
“カースト制度ってどんな制度? インドにおける身分制度の考え方【親子で世界を学ぶ】.”
HugKum, 3 April 2023, https://hugkum.sho.jp/458367. Accessed 19 September 2023.
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