ピクニック:余談(ジェームズ・ウォン・ハウ) | ALL-THE-CRAP 日々の貴重なガラクタ達

ピクニック:余談(ジェームズ・ウォン・ハウ)

先日、ウィリアム・インジ原作の『ピクニック』について書いた。

そのワンシーン。

なんと美しく絵画的な場面だろうか。

主役のウィリアム・ホールデンを中心にした見事なピラミッド構図である。

この場面を見てすぐ想像されるのは、アントワーヌ・ヴァトーの『シテール島への巡礼』だろう。

ロココ・スタイルの中に愛を求める群像が描かれるルーブル美術館所蔵の傑作だ。

高階秀爾は、『名画を見る眼』の中で、「この絵は……愛の島からの船出である。画面では大勢の男女がにぎやかに語り合っていながらどことなく哀しみにもにた寂しさが感じられる……」と書いている。まさに『ピクニック』の主題そのものではないか!

そして画面の質感は、エドゥアール・マネの『草上の昼食』である。

芸術とは、常に傑作に触発され、さらに高みを目指していく人間の営みなのだろう。

『ピクニック』を撮影したのは、ジェームズ・ウォン・ハウ。

広東省に生まれ、アメリカで育った中国系アメリカ人だ。若き日に、ハリウッドでヘンリー・小谷と出会い、教えを受けたという。

美に取り憑かれたジェームズ・ウォン・ハウは、古今東西の芸術に触れていたはずだ。それらが、血となり肉となっていなければ『ピクニック』のあの場面は、絶対に撮れなかったはずだ。

映画は、監督の作品としてクレジットされるが、それは総合芸術である。

撮影はまだしも、裏方の編集などに陽があたることは少ない。しかし、編集によって生命を吹き込まれた作品があることもまぎれもない事実だ。これからは、それらについても、語っていきたい。

 

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