ブレインドクター

荒井隆秀です。

 

 

ありがたいことに

僕は脱サラで、

 

周りに比べてかなり年とって

からの開業でしたが、

 

今こうして幸せに事業を営めています。

 

まったく予想もしていなかった人生

を歩んでいますが、

 

その世界観を振り返ってみます。

 

 

僕の親父は戦争疎開で横浜から北海道に

渡ってきました。

 

親父の爺さん(親父の祖父)の家は、

お手伝いさんが6~7人いて、

 

貿易商とパン屋さんを営んでいた

そうです。

 

なんかモダンな感じですが、

当時は、裕福な家だったそうです。

 

(ちなみにお墓は東京で「荒井家」ではなく

 「越中屋」となっています)

 

 

戦争による被害が大きくなってきて

親戚を頼って北海道まで来たそうですが、

 

とにかく命からがら(僕の)祖父と親父

二人で来たらしく、

 

その当時はまだ小学3年だった親父は、

離れ離れになってしまった母親や、

 

お姉さん、弟を思い出しては、

毎日淋しさに涙を流していたそうです。

 

(生前書き綴っていた人生記に

 そう書いてありました)

 

 

子供のころからとても勉強ができたらしく、

将来は弁護士になろうという強い夢を

持っていたのですが、

 

あの戦争によって

横浜の家もお金も財産もすべて失い、

大学に行くことも叶わず、

 

通信教育で大学を卒業し、弁護士では無く

学校の教師になりました。

 

 

戦争という時代背景と、お金の無いことで

夢を打ち砕かれた親父は、

 

酒に酔って

 

「戦争なんかしやがって!」

「金が無かったら何も出来ないんだ!

 世の中金がすべてなんだ!」

 

と叫んでいました。

 

 

そんな親父でしたから、

 

長男である僕に対する期待は、

もの凄く大きかったようです。

 

まだ小学校に入る前から、

 

「うちは徹底的にスパルタ教育だ!

 隆秀、お前は勉強して

 絶対に弁護士になるんだ!いいな!!」

 

いつもそう言われていました。

 

 

そして何かあって僕が泣くと、いつも、

街灯の明かりはもちろん、

 

家の明かりすらない真っ暗な田舎道を

かつがれて行き、小川に捨てられました。

 

北海道の真冬であってもです。

 

恐怖で、泣きじゃくりながら

必死に親父の背中を追いかけていました。

 

 

「泣くな!

 泣いたらまた川に捨てるぞ!!」

 

 

そう怒鳴られながら、

一生懸命に涙をこらえ、

 

親父にすがりついて

家に帰っていました。

 

 

「お父さんの言うことを聞かないと

 僕は捨てられるんだ。

 

 だからいつでもお父さんの言うとおりの

 子供でいなきゃいけない」

 

 

「お父さんの言うとおりに出来ないと

 お母さんが叱れらる。

 

 そしたら僕はお母さんにも

 捨てられるかもしれない」

 

 

大人の言葉で言えば、

両親の愛が欲しくて、

 

母からの愛に包まれていたくて、

 

精一杯背伸びをして、

自分をつくろって生きていたのだと

思うのです。

 

 

小学校に入る前、

お袋にクリスマスプレゼントに、

 

サンタの靴に入ったお菓子をねだった

事があります。

親父が夜家に帰ってくると、お袋は

そのことをいきなり親父に告げました。

 

「そんなものが欲しいのか!

 まったく」

 

なんだかお袋に告げ口された気持ち

がしました。

 

言ってはいけないことを

言ったのかもしれない…

と後悔しましたが、

 

「どら、今から買いに行くぞ!!」

 

という声に、戸惑いながらも、

 

雪が深々と降りしきる中、

足早に店に向かう親父を

 

途中、転んで雪だらけになりながら

必死に追いかけました。

 

「こったらもんが欲しいのか」

 

店で僕が指差したサンタの靴を

無造作に店主に差出し、

買ってくれました。

 

嬉しい気持ちと、

父親に迷惑をかけてしまった気持ち。

嫌われてしまったかもしれないという

切なさ。

 

僕はそれ以来、お袋にも自分の

気持ちをはっきり出さない子になって

行ったようです。

 

そしてやがて、

大きなトラウマを招く事件が起こります。

 

 

 

親父は昭和ひとけたの男ですし、

「愛してるよ」なんて子供に言う

 

そんな時代ではなかったから、

仕方がないかもしれませんね。

 

 

それよりも、父親は

夢を果たせなかった自分自身に、

 

いつも腹を手立ていた。

 

自分自身を愛せていなかった

気がします。

 

 

ここまでお読みいただき、

ありがとうございます。

 

 

~つづく~