北川正恭 早稲田大学名誉教授が審査委員長を務めるマニフェスト大賞※に「『生活保護のしおり』書きっぷり調査プロジェクト」をエントリーしました。

※マニフェスト大賞とは、日本最大級の政策立案コンテストです。 マニフェスト大賞HP→http://www.local-manifesto.jp/manifestoaward/

下記がエントリー文書です。

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1.「生活保護のしおり」の実態調査
 長期化するコロナ禍のなかで、生活に困窮する方が増えています。生活困窮のセーフティネットが生活保護です。しかしながら、生活保護の申請にあたって「扶養照会」が大きなハードルの1つになっています。「扶養照会」とは、自治体が、生活保護を申請した人の親族に対して、申請者への援助が可能かどうかを問い合わせるものです。
 親・兄弟等に知られたくないと申請を妨げる要因となっていた「扶養照会」が社会問題となり国会等でそのあり方が議論された結果、厚労省は令和3年に、生活保護申請者が親族と縁を切っていたり、相続の問題で対立していたりして「扶養が期待できない場合」は、問い合わせの手続きが省略できると自治体に事務連絡しました。またDVや虐待があった場合は行わないように求めています。

2.生活保護のしおり書きっぷりの調査結果
 厚労省が扶養照会の見解を改め、全国の自治体に事務連絡したにも関わらず、その後においても多くの生活困窮者から「生活保護申請のために役所に相談に行ったが『例外なく親族に扶養照会する』と申請窓口で言われたため申請することを躊躇している」等の声が後を絶ちませんでした。
 そこで、「超党派の議員※1」や「市民福祉団体※2」で構成する「生活保護のしおり書きっぷり調査プロジェクト」を令和3年12月に立ち上げ、生活保護申請の際の案内書である「生活保護のしおり(各自治体が独自に作成している)」を調査し、その実態を見える化することとしました。

3.調査結果
 1都3県(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)の157自治体の「生活保護のしおり」を入手し、調査したところ、9割超の自治体で「扶養照会」不要のケースが生活保護のしおりに掲載されていない実態が明らかになりました。具体的には、「援助が期待できない者に扶養照会は行ない」旨をしおりに記していたのは全体の3.8%(東京3・7%、神奈川10.0%、千葉4.8%、埼玉0.0%)。暴力や虐待を受けた場合に通知しないと記していたのは、28.7%(東京14.8%、神奈川45.0%、千葉31.0%、埼玉36.6%)でした。厚労省が見解を改めたのにも関わらず、いまだに多くの自治体では「生活保護のしおり」を改善せず、「例外なく扶養照会が行われる」という誤解を申請者に抱かせ、申請を躊躇させている可能性があります。

4.成果について
 調査結果は、東京新聞(令和4年1月22日)をはじめ多くのメディアに報道され大きな反響がありました。その後、令和4年3月には厚労省が全国の自治体に対して「生活保護のしおり」の再点検を要請し、申請者は援助を期待できる親族がいない場合、その旨を伝えられることを明記するよう求めました。調査がきっかけとなり、国を巻き込み全国の自治体で「生活保護のしおりの書きっぷりのあり方」の改善にむけて議論が加速しています。
 
※1 石橋みちひろ参議院議員、西沢けいた東京都議、白根大輔埼玉県議、米村かずひこ神奈川県議、安藤じゅん子千葉県議、小椋修平足立区議、北村かずゆき柏市議、野内みつえ大和市議、関根ジロー松戸市議

※2 一般社団法人つくろい東京ファンド