9月28日、9月議会最終日に「2019年度松戸市決算への賛成討論」を行いました。市議会会派「政策実現フォーラム」からは、増田薫市議が会派を代表して登壇しました。討論内容は下記の通りです。

討論の時間は「時間制限なし」であったものを2016年に多数決により短縮することになってしまったうえ※、今回はコロナ対策として更に短縮しています。

※詳細は→https://ameblo.jp/sekine-jiro/entry-12193648431.html

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本定例会に上程されております、認定第1号、令和元年度松戸市一般会計歳入歳出決算並びに認定第2号から認定第7号までの令和元年度各特別会計歳入歳出決算、及び認定第8号から第10号の各公営企業会計決算について、会派を代表いたしまして、賛成の立場から討論いたします。
 
現在、松戸市では「市役所の建て替え」「新焼却炉建設」「学校施設の長寿命化と公共施設再編整備」「新松戸駅東口の立体換地を伴う土地区画整理事業」「新松戸駅への快速列車を停車させるための調査事業」など、多額の予算を要する、複数の大型事業が進められようとしています。

決算分科会では、各大事業のうち『新庁舎必要面積算定業務』『公共施設再編整備推進事業』『土地区画整理事業』についてが審査の対象でした。審査では、これら事業の成果と、今後の事業化した際に必要とされる「事業費」等について質疑しましたが、すべてにおいて明確な答弁がいただけませんでした。

これで、どうして事業を進めるか否かの判断を我々議員がすることができるのでしょうか?ましてや来年度以降、コロナ禍による「税収減」や「病院事業の経営悪化」等が想定され、市の財政運営が厳しいものになるのは共通認識です。


我が会派としては、大型事業の多くは市民のためになるものと考えます。ただし、将来にわたって責任ある財政運営をしていくことが最も重要であり、その視点において、厳しい現実を見つめ、今絶対にやらなくてはいけない事業を行うという判断が必要と考えます。

これまでにも、全ての大型事業を行えば、市が自ら示した借金限界値の目安を超えてしまうことが懸念されて参りましたが、さらに今回のコロナ禍において、その目安を突破するのは確実となるのではないでしょうか。

もちろん、必ず行わなくてはいけない「マスト」の事業はやはり行わなければなりません。重要なのは、必要性の是非を、長期的視野と多角的視野を持ちつつ検討することだと思います。その上で、大型事業の市負担額を一刻も早く明らかにして、市の財政、とりわけ市債残高と照らし合わせ、その実現性や将来負担等を議論し、各大型事業に対して優先順位を改めて設定し、場合によっては、一部の大型事業の規模を見直ししたり、凍結するなどの決断が必要ではないでしょうか。

そのような視点から、我が会派としては、各大型事業等の事業費を早期に議会に示し、その優先順位について、改めて市議会と議論をしていくべきだと、これまでの議会においても再三に渡り指摘しておりますが、再度、強く求めるものです。

それでは、ここから各事業に対して、順番が前後しますが、何点か申し上げます。

初めに「消防費の職員研修業務」についてです。平成21年に新規採用職員集中訓練に関する賠償請求事件、関係した11人の消防職員が処分された「パワハラ訴訟」をきっかけに、綱紀粛正を強化する動きが加速しましたが、決算年度の令和2年、消防職員が女性職員の右大腿部を蹴り停職一か月の処分。さらに年度が変わってからも停職1カ月の処分が出されるパワハラ行為がありました。おそらく、過酷な環境下ゆえの問題が解消されない実態かと思います。決算分科会では、再発防止策等について伺いましたが、消防局として「全職員を対象としたハラスメント調査を行うこと」「外部講師によるアンガーマネジメント研修を実施すること」が示されました。アンガーマネジメントは怒りをコントロールすることを学ぶものなので、効果を期待します。引き続きのご対応をお願いします。

衛生費のエネルギー対策事業については、家庭用太陽光発電システム、ネット・ゼロ・エネルギー住宅、ライフサイクルカーボンマイナス住宅などについて質疑し、設置件数に対する補助件数が非常に少ないことが明らかになりました。市長は施政方針演説の冒頭で「地球温暖化による気候変動は、地方自治体にとって待ったなしの課題であるとあらためて認識したところです」とおっしゃっていました。また市議会としても、昨年12月定例会において、気候危機・気候非常事態を前提とした地球温暖化対策のさらなる強化を求める意見書が全会一致で可決され、国に対して、2030年度目標の達成に向けた地球温暖化対策の推進と、エネルギー技術の革新、さらには、地方自治体が実施する施策への支援拡充を求めたところです。気候変動に関して基礎自治体として現行の事業を含めて、できることをさらに押し進め、「気候非常事態宣言」も視野に入れ、気候変動対策の政策立案や計画、具体的なキャンペーンなどを積極的に行っていくべきだと考えます。

社会教育費の図書等購入費については、いまだに改善されたとは言い難い状況です。松戸市は政令指定都市・特別区を除く、人口40万人以上の全国の自治体の平均値、約113万冊の約半分、60万冊と、大きく下回っています。答弁では100万冊程度の蔵書が必要と考えているとのことでしたが、その目標が達成できたとしても平均値以下です。図書カード配布もいいのですが、蔵書の少なさについてももっと目を向けていただきたいです。今後、東松戸地域館の図書館整備など、機会をとらえて、より多くの蔵書を確保できるよう工夫していただきたいと思います。

また、松戸市図書館整備計画にあるように、変化の激しい時代に市民の自立を助け、地域のコミュニティを支えるような、大人が使える課題解決型の、真の公共図書館が実現できるよう、人的育成も含めてさらに進めてください。

高齢者成年後見制度利用支援事業について。本事業は成年後見制度を市長申立で申請する人のための支援事業ですが、この制度はここ数年で全国的にも顕著な増加が見られます。単身世帯や身寄りのない高齢者等が増加していることが背景だと考えられ、今後さらに増えると考えるのが自然でしょう。後見人の育成や広めるための活動など、市民からのニーズにしっかりと対応できる体制作りに注力していただきたいと思います。

以上、一般会計歳入歳出決算よりいくつか申し述べました。

次に、公営企業会計決算より病院事業会計決算について述べたいと思います。決算数字については、経営指標の中で最重要とされている医業収支比率が、総合医療センター、東松戸病院とも若干の改善が見られた決算となり、関係各位のご努力に対し敬意を表します。東松戸病院については、病院審議会の答申にあるように「今回の決算数字により、存続か否かを含め、東松戸病院の今後を判断する」としていることからも、極めて大事な数字だと思います。しかしながら、東松戸病院の今後については、単に数字上だけの判断だけですむものではなく、本市の病院事業、市民生活と照らし合わせた上での総合的な判断が必要な極めて重要な判断であると考えています。東松戸病院の今後について最重要ポイントは、建て替えの費用についてだと思います。耐震性に課題のある東松戸病院を存続させるためには、建て替えは必須であり、その費用がいくらになるのか。病院、市はその負担をどう考えるのか。赤字病院の建て替えを市として決断するのか、だと思います。一方、仮に閉鎖する場合、総合医療センターからの退院者の受け入れや東松戸病院で働く人の処遇の検討、市内唯一の「緩和ケア病床」は東松戸病院で、単価も一日平均約5万円と高単価であることから、どう判断するのか、など検討する必要があると思います。東松戸病院の果たす役割、対する市や病院の負担、しっかりとそれらを精査し、かつ、我々議会に対して、その内容を示し、十分に議論した上で、この大事な決断をしていただきたいと考えております。
 
この度の決算審査を通して感じたことは、特に大型事業に関して、将来見通しがどう検討されているのだろうか?という疑問です。

「平成31年 松戸市公共施設再編整備基本計画」の目的には「老朽化した建物の大規模改修や建て替えなどが本市財政を圧迫することが懸念されている」こと「将来更新費の試算では、公共施設の改修・建て替えに必要な財源が不足する見通しであることから、公共施設の再編整備の推進により総量の最適化や公共施設の適正配置を図るとともに、将来的な財政負担の縮減と平準化を図ること」、最後に「公共施設再編整備は将来に向けた”まちづくりの礎(いしずえ)である”という認識のもと、公共施設の計画的かつ戦略的な再編整備を推進することを目的とする」としています。

大型事業にばかり注目が集まりますが、長期的スパンで財政運営の健全化を考えれば、公共施設の再編には手をつけなければなりません。市長の姿勢が求められるところです。

また、民生費の一般会計予算に占める割合に着目すると、本郷谷市政が誕生した平成22年(2011年)には42.2%だったものが、松戸市人口ビジョン 松戸市総合戦略を策定した平成27年度は45%を超え、決算年度では53.7%にまで膨らんでいます。少子高齢化において高齢者対策をしなければならない状況ですが、このうち子ども政策には一体何%を費やしているのでしょうか。若年の労働人口の増加を目指すことには一定の理解をしますが、本市の子育て世代導入政策は一見成功しているようでも、実は転入より転出が上回っている実態を見れば、そろそろこれまでの子育て政策の検証と分析をし、検討し直す時ではないでしょうか。

コロナ禍で、平時から問題視されていたもの、おざなりにされていた問題が一気に表出しました。それは、子どもの貧困であったり、男女の働き方や収入格差、医療や福祉体制の脆弱さ、教育現場のシステムなどですが、改めて、市民の福祉向上を図る行政の使命について考えさせられました。

我が会派としては、令和元年度決算に反対しないことに決めましたが、両手を上げて賛成とは考えておりません。最初に述べましたが、市の財政運営には長期的視野と多角的視野が欠かせないと思います。絶対に外せない、マストの事業とは何か、公共施設をどのように再編していくべきなのか、今一度精査し、未来を歩む子どもたち、その先の子どもたちににツケを残さない、堅実な事業運営・財政運営を望みます。
 
最後に職員の皆さまのご対応には感謝いたしております。

以上、政策実現フォーラムを代表しての賛成討論とします。