現在、松戸市は「市役所建て替え(現市役所が耐震性がない)」「新焼却炉建設(現和名ケ谷クリーンセンターの更新時期を迎える)」「学校施設の長寿化と公共施設再編(多くの公共施設の更新時期を迎える)」「新松戸駅東口の立体換地を伴う土地区画整理事業」「新松戸駅への快速列車を停車させるための事業」など多額の予算を要する、複数の大型事業が進められようとしています。

 

このうち今後、事業化した際に必要とされる各大型事業の「事業費」については現時点において「新松戸駅東口の立体換地を伴う土地区画整理事業(区画整理に約65億円、道路整備に約11億円、合計約76億円)」のみが明らかになっており、これ以外の全ての大型事業の「事業費」を本郷谷・松戸市長は示しておりません。

 

これで、どうして事業を進めるか否かの判断を議員がすることができるのでしょうか?ましてや来年度以降、コロナ禍による「税収減」や「病院事業の経営悪化」等が想定され、今後の市財政運営は厳しいものになることは共通認識です。

 

おそらく、コロナ禍において、大型事業等をすべて行えば、市が自ら話した借金限界値の目安(約1436億円)は軽く突破するのは確実と思われます。しかし、市にとって必ず行わなくてはいけない事業は行わなくてはなりません。ですので、重要なのは、これら大型事業の市負担額を一刻も早く明らかにして、コロナ禍によって厳しさを増した市の財政、とりわけ市債残高と照らし合わせその実現性や将来負担等を議論し、各大型事業に対して優先順位を設定し、必要に応じて「一部の大型事業の規模を見直し」したり、「場合によっては一部の大型事業を凍結すること」が必要です。

 

しかしながら、本郷谷・松戸市長は各大型事業の「事業費」を明らかにしないまま、コロナ禍以前に事業化を決めた「新松戸駅東口の立体換地を伴う土地区画整理事業」を、現時点においても強引に推し進めようとしています。

 

そこで本日、市議会の超党派で「『新松戸駅東口の立体換地を伴う土地区画整理事業の凍結』と『立体換地による区画整理を伴わない道路整備等』を求める要望書」を市長に提出しました(立体換地を伴う区画整理事業よりも、道路整備事業のほうが財政支出を大幅に縮減できる)。要望書を添付します。

 

 

なお「新松戸駅東口の立体換地を伴う土地区画整理事業」については財政面以外にも複数の問題点があります。2020年3月議会において、関根ジローが所属する市議会会派「政策実現フォーラム」から、その問題点を指摘してありますので、議事録を転載します。

 

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新松戸駅東側地区土地区画整理事業について3つの大きな問題を指摘します。

 

まず、「財政面からの問題」について、2点の指摘をします。

 

1点目は、松戸市全体としての財政面の問題についてです。本事業計画に投入する市税投入額としては、区画整理に約65億円、道路整備に約11億円、合計約76億円を見込んでおりますが、市役所の建て替えや新焼却炉建設をしなければならないという今の本市おいて本当にそれだけの財政的な余力があるのか大きく疑問です。また、多額の予算が必要な立体換地を伴う区画整理事業ではなく、よりコストがかからない道路整備事業など他の手法の検討が十分にされているか疑問が残ることも問題であると思います。

 

2点目は、立体換地建築物保留床の赤字での販売計画についてです。昨年8月に作成された当該区画整理事業の事業計画書によれば、保留地処分金は約92億円で、そのうち保留床部分の処分金は71億2000万円となっています。となれば土地部分の価値は差し引き約20億円強ということになります。

 

一方、立体換地建築物、14階建てマンションの総建設費は約105億円、質疑で明らかとなった権利床部分を除いた保留床部分の建設費は約90億円ということでした。このことから、保留床の販売は、約90億円をかけて建てたものを71億2000万円で販売するものであり、約18億8千万円もの赤字がでる計画であることが明白となりました。事業資金確保のため、保留地を販売するという区画整理の一般概念には程遠く、保留地販売で逆に損を出し、そのため余計に税金を投入するという計画であるならば、それは税金の使い方として市民の納得を頂くことは極めて難しいと、指摘せざるを得ません。

 

次に「地権者合意形成の問題」についてです。

 

先般の委員会質疑のなかで「12月下旬に12名の連名で、市に要望書が提出されている」ことについて伺いました。要望書の内容を伺ったところ「事業内容の見直しを求めるものだった」と答弁があり、それに対して「土地区画整理事業に反対という理解でよいか」と質問したところ、「市としては賛成と捉えている」という、極めて理解しがたい答弁がありました。今回の要望書が「事業内容の見直しを求めるものだった」ことから、12人の方は少なくともこの事業計画での土地区画整理には「賛成していない」ことが明らかになったと受け止めるべきではないでしょうか。以前、9割方の地権者が賛成しているとした市の答弁がありましたが、それから大きく賛成者が減少していると思います。地権者の意向を丁寧に聞きながら合意形成を図ってまいりたいといいつつも、実は意向を把握できているのか、自分たちに都合の良いようしかとらえていないかとはなはだ疑問が残ります。

 

最後に「手続きの不透明さの問題」について、1点指摘します。

 

立体換地に関するアドバイザリー契約について、公募型プロポーザルを行っているものの、公募期間が約一週間という極めて短い期間であったことや、応募条件が厳しいものになっており、結果、現在の業者(地権者が三菱地所を紹介してきたと、市が12月市議会で答弁しています)が選定されるべく選定されたような印象をうけています。また、その契約は「無料」ということも、過去の議会の審査において明らかとなっており、競争性や公平性が担保されていたのか、疑問の声が市民から挙がっています。加えて、市が建設したマンションの保留床部分を、公募により販売することになっていますが、先ほども述べたように計画上は赤字となっていて安く購入する業者に極めて有利とみられます。また無料で現在、契約をしている業者も応募することは可能であることも審議のなかで明らかになっています。こうした市の保留床販売における一連の手続きには不透明さが残り、仮に今回の業者が購入者となれば、市民からさらに疑問の声が挙がると思われます。

 

このように、土地区画整理関係業務は多くの問題があると思われるのですが問題はこれだけではありません。国土交通省が策定した「立体換地マニュアル」には、「立体換地の手法を活用するメリットとして、より簡易な手続きでスピード感をもって実施することが可能」とあります。しかし、区画整理事業地のうち3割以上を所有する地権者が、アクセス道路や駅前広場の整備については理解し協力する姿勢を示しているものの、マンション建設を伴う立体換地の区画整理で、77%を超える減歩率の土地区画整理事業に反対している現状では、すでにスピード感をもって実施することは不可能と思われます。事業が長引けば、消費税増税や、コロナショックによる経済状況変化により、リスクは増大、地権者の高齢化に伴う相続も発生し、さらに事業に遅れが出ることも心配され、結果、多額の公費を投入した区画整理計画が市の財政をさらに圧迫しかねないものになるのではと最後に指摘をさせていただきます。

 

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