東日本大震災では、要介護高齢者、障がい者、妊産婦、乳幼児、アレルギー等の慢性疾患を有する者、外国人等の「要配慮者」が避難所等に避難を余儀なくされましたが、この要配慮者への支援が必ずしも十分ではなかった事から平成25年6月に災害対策基本法が改正され、避難所における生活環境の整備等が進められています。
 
この取組みに当たって、内閣府が「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針(同年8月)」を策定し、避難者の数や状況の把握や要配慮者へのきめ細やかな支援を目的として、災害時に避難所の受付で作成する「避難者名簿(避難者カード)」を作成することが望ましいとしていますが、超党派の全国地方議員と市民で構成する『避難者カード標準化プロジェクト(事務局:関根ジロー)』が25都道県域710自治体で調査したところ、約3割の自治体で避難者カードが未策定であり、また約7割の自治体で要配慮者に関する項目等を設けていないことが明らかになりました。
 
「避難者名簿(避難者カード)」が未策定であったり、要配慮者に関する項目等を盛り込んでいない自治体が散見される理由のひとつは、政府があるべき避難者名簿(カード)を例示していなかったり、全国の避難者カードの優良事例を紹介していないことがあります。
 
そこで『避難者カード標準化プロジェクト』は政府に対して「災害時避難所における避難者名簿の様式に関する質問主意書」を提出し、避難者名簿(カード)の整備推進にむけての見解を質問しました。
 
そして先般、その答弁が政府から公開されてました。答弁を要約すると、
 
①政府が全国の避難者カードの策定状況を把握していないことを認めた
 
②政府が全国の避難者カードのなかから優良事例を紹介していくことを明らかにした(裏返せば、全国の避難者カードの実態を把握することを意味する)
 
という大きく前進するものでした。政府が全国の避難者カードのなかから優良事例を紹介していくことで、避難者(名簿)カードを未策定だったり、要配慮者等に関する項目が盛り込んでいない自治体がゼロになることを願っています。
 
※避難者カード標準化プロジェクトHP⇒ http://www.hinansha.com/
 
※避難者カード標準化プロジェクトは、北川正恭早稲田大学名誉教授が審査委員長を務めるマニフェスト大賞において優秀政策提言賞を受賞しています
 
下記は質問主意書とその答弁です。
 
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【質問】
 
災害時避難所における避難者名簿の様式に関する質問主意書
 
平成二十三年三月十一日に発生した東日本大震災においては、要介護高齢者、障害者、妊産婦、乳幼児、アレルギー等の慢性疾患を有する者、外国人等(以下「要配慮者」)が避難所等に避難を余儀なくされたが、この要配慮者への支援が十分でなく様々な課題が生じたことから、平成二十五年六月に災害対策基本法が改正され、避難所における生活環境の整備や避難所以外の場所に滞在する被災者への配慮について規定された。
この法改正を受けて策定された「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」の中で、市区町村は避難所における良好な生活環境の確保等に努めることを求められ、避難者数や避難状況の把握、要配慮者へのきめ細やかな支援を目的として、災害発生時の各避難所においては、平時から行政があらかじめ様式を整えて印刷準備をしておいた「避難者名簿(もしくは避難者カード等)」へ避難者自身に記帳をしてもらい、名簿を作成することが望ましいとされた。
 
報道によると、超党派地方議員グループが本年八月から九月にかけて、二十五都道府県七百十自治体における避難者名簿様式の実態を調査したところ、そもそも避難者名簿様式を未だに策定していない自治体が三割近くにのぼり、約八割の自治体で要配慮者に関する項目の記載欄が不十分であるという結果が明らかになった。
 
一、地方自治体により、避難者名簿様式の事前準備状況に優劣が生じており、未策定の地域では災害時の対応に遅れが出る可能性がある現状を政府としてどのように捉えているか。
また、本年は、熊本地震、北海道・東北地方を中心とした台風被害、鳥取地震と、避難を要する規模の自然災害が相次いだが、これらの被災地における避難者名簿の活用状況の実態について、政府はどのように把握をしているか。
 
二、気候や文化、都市部なのか山間部なのか等各々の地域固有の事情により独自の名簿様式を作成できる利点には配慮しつつも、政府として望ましい形式の統一様式を取組指針の中で事前に提示する考えはないか。
もしくは、望ましい様式を整えている地方自治体のモデルケースを政府として積極的に公表して、名簿作成時の参考様式を提示する考えはないか。
あるいは、現在、取組指針の中で努力目標にとどまっている避難者名簿の事前作成準備を、そもそも災害対策における地方自治体の義務として位置付けるつもりはないか。
 
右、質問する。
 
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【答弁】
 
一について
「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取り組み指針」においては、避難者名簿の様式をあらかじめ作成し、印刷して避難所の備蓄倉庫等に保管しておくことが望ましいとしたところであり、各市町村において、地域の実情に合わせて判断されるべきものと認識している。
 
平成28年に発生したご指摘の自然災害に際して、各市町村が避難所を設置した場合には、必要に応じ、避難者名簿を作成しているものと認識しているが、個別の避難者名簿の作成状況については、把握していない。
 
二について
一についてで述べたとおり、事前の様式作成等については、各市町村において、地域の実情に合わせて判断されるべきものと認識していることから、政府として、一律の名簿様式を作成し、公表することや、事前の様式作成等を市町村に義務付けることは考えていないが、各市町村が作成した名簿様式で他の各市町村の参考となるものについては様々な機会を捉えて周知を図り、市町村において避難者名簿の適切な作成が図られるように支援してまいりたい。