日本では、1998年以降下がり続ける保護者の賃金収入と、相反して上がり続ける大学の学費により、学生は奨学金を借りなければ大学に通うことが困難になっています。

奨学金制度を運営する「独立行政法人日本学生支援機構」によれば、2014年度実績では135万人(無利子奨学金47万人、有利子奨学金88万人)が同機構の奨学金を利用しています。これは、全国の大学生のほぼ2人に1人にあたります。

他方で、大学卒業後には3人に1人の学生が非正規雇用となっており、2015年4月には、返還猶予期間が5年から10年に延長されたものの、奨学金を借りた8人に1人が返済の滞納や猶予の状態にあるとされています。

このような状況にあるにもかかわらず、安倍政権は、国立大学の授業料(2015年度約54万円)を更に値上げし、2031年度には約93万円にすることを検討しています。

このことについて反対する意見書を松戸市議会に提出しましたが、残念ながら否決されてしまいました。意見書文と各議員の賛否態度は下記のとおり。


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【意見書に賛成した議員】

○会派:無会派
関根ジロー(選挙時:民主党)

○会派:社民・無所属クラブ
二階堂剛(選挙時:社会民主党)
DELI(選挙時:無所属)
増田薫(選挙時:無所属)

○会派:日本共産党
宇津野史行(選挙時:日本共産党)
高橋妙子(選挙時:日本共産党)
平田きよみ(選挙時:日本共産党)
山口正子(選挙時:日本共産党)
高木健(選挙時:日本共産党)

○会派:無会派
中田京(選挙時:無所属)

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【意見書に反対した議員】

○会派:市民力
山中啓之(選挙時:無所属)
谷口薫(選挙時:無所属)
原裕二(選挙時:無所属)
大塚健児(選挙時:みんなの党)

○会派:まつど自民
杉山由祥(選挙時:無所属)
石井勇(選挙時:無所属)
大谷茂範(選挙時:無所属)
鈴木大介(選挙時:無所属)
木村みね子(選挙時:自由民主党)
張替勝雄(選挙時:無所属)
田居照康(選挙時:自由民主党)
平林俊彦(選挙時:自由民主党)
小沢暁民(選挙時:自由民主党)

○会派:市民クラブ
末松裕人(選挙時:無所属)
深山能一(選挙時:無所属)
渋谷剛士(選挙時:無所属)
市川恵一(選挙時:無所属)
岩堀研嗣(選挙時:無所属)
山口栄作(選挙時:自由民主党)
中川英孝(選挙時:無所属)

○会派:公明党
城所正美(選挙時:公明党)
石川龍之(選挙時:公明党)
鈴木智明(選挙時:公明党)
松尾尚(選挙時:公明党)
岩瀬麻理(選挙時:公明党)
高橋伸之(選挙時:公明党)
伊東英一(選挙時:公明党)
飯箸公明(選挙時:公明党)
織原正幸(選挙時:公明党)
諸角由美(選挙時:公明党)

○会派:清松会
大橋博(選挙時:無所属)
箕輪信矢(選挙時:無所属)
桜井秀三(選挙時:無所属)

※敬称略
※カッコ内は選挙の時の党派です。
※会派は平成27年12月議会現在
※関根ジローは民主党です。市議会では3人以上でないと会派が名乗れないため無会派となっています。

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「国立大学法人運営費交付金の削除案撤回を求める意見書」

国立大学運営費交付金は平成16年の法人化から12年間で1470億円(12%)削除されており、各大学では業務の効率化や経費の削減などの経営努力を積み重ねてきた。その過程で教職員の非正規化が進み、正規職員への管理業務集中などによる教育研究活動へのしわよせが顕在化し、研究と教育文化の継承が困難となってきている。さらには大学の基盤である基礎的研究費を削減せざるを得ない状況にあり、経営努力は既に限界に達している。

こうした状況の中で平成27年10月26日に開催された財政制度等審議会財政制度文科会において、財務省から運営費交付金を、「今後15年間毎年1%削減する。」という案が示された。これは授業料引き上げや産学連携などによる毎年1.6%の自己収入増と、少子化に対応した大学の「規模の適正化」を迫るものであり、高等教育に対する国の責任放棄と言わざるを得ない。産学連携による収入増には限界があり、仮に削減分を授業料増で賄うには、文部科学省の試算で現在54万円の授業料を毎年2万5000円値上げして、2031年には93万円となり、約40万円の値上げとなる。

奨学金で平均300万円、多いと1000万円もの借金を背負うことになる学生やアルバイトに明け暮れる学生の実態からも、値上げは教育の格差のさらなる拡大となり、大学で学び、未来を切り開いていく機会を国の政策によって奪うことになる。

既に25大学の学長や大学経営協議会学外員から「国立大学の将来、わが国を支える化学技術と高等教育の未来に大きな禍根を残す」「国立大学が破滅的な機能不全に陥り、将来に計り知れない大きな損失を与える」と反対の声明が出されている。

よって本市議会は国に対し、国立大学法人運営費交付金の毎年1%削減案を撤回することを強く求めるものである。

以上、地方自治法99条の規定により意見書を提出する。