【民主党は労働者派遣法改正案などに反対したものの、「与党と維新の党」の賛成多数で可決される】

参院厚生労働委員会で8日午後、政府提出の労働者派遣法改正案と与党が提出したその修正案、「与党と維新の党」が衆院で修正可決した同一労働同一賃金推進法案の採決が行われ、いずれも与党などの賛成多数で可決した。民主党はいずれの法案にも反対したが、合計50項目にわたる付帯決議案を提案し、与野党の賛成多数で可決された。

採決に先立って白眞勲議員は下記の通り討論を行った。

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私は、民主党・新緑風会を代表して、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案」並びにその「修正案」並びに「労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案」に対し、いずれも反対の立場から討論を行います。

本改正案は、派遣労働者の雇用の安定や処遇改善につながらず、生涯派遣で低賃金という状態を拡大させるものであり、我が国の雇用の在り方を大きく劣化させるものであります。

以下、改正案の具体的な問題点を申し上げます。


第一に、安倍総理以下政府は今回の改正案を「正社員を希望する派遣労働者にその道を開く」ものであるとしていますが、その根拠を見ていけば、

①「雇用安定措置により派遣先への直接雇用の依頼をさせる」としつつ、派遣元事業主は電話で依頼するだけでよいし、派遣先は正社員として採用する必要はありません。

②また、「個人単位の期間制限によって3年に一度派遣労働
者が自身のキャリアを見つめ直す機会とする」と言いますが、見つめ直した結果として正社員になりたいと考えてもそのための有効な手段は用意されていません。

③さらに、「教育訓練等のキャリアアップ措置を派遣元事業主に義務付ける」としますが、正社員化のための教育訓練の実施は人材派遣会社にとっては何らインセンティブもなく実効性はありません。いまだ教育訓練の具体的な内容すらも明らかにされていません。条文上どこにも正社員になれるという保証は無く、そもそも目指すべき正社員の定義さえ明らかにされていないのです。


第二に、期間制限の見直しについてであります。
本改正案が、業務単位の期間制限を廃止することは、労働者派遣法が制定当時から専門的な業務にのみ派遣労働を認めてきたこと、業務を原則自由化した後も専門的な業務についてのみ期間制限の例外としてきたことといったこれまでの労働者派遣制度の在り方を根本から覆すものであります。
改正案によれば、派遣先企業は、専門性の無い業務を含むあらゆる業務について、人を入れ替えつつ派遣労働を永続的に利用することが可能となるのです。これは、常用代替の防止や、派遣労働が臨時的・一時的なものであるという原則を完全に無視し、派遣労働を無制限に拡大させるものであります。
また、労働政策審議会では、労働者代表も使用者代表も専門26業務の廃止を求めていなかったにもかかわらず、それを厚生労働省が推し進めました。これは、今回の改正案が人材派遣会社の意向を最優先にして作られたことの証拠であります。労働者を守るべき任務を負う厚生労働省が業界団体のために法改正を行うなど、魂を捨ててしまったものと断じざるを得ません。

第三に、政府が派遣労働者の雇用の安定のための要(かなめ)とする雇用安定措置についてであります。
派遣先への直接雇用の依頼、派遣元での派遣労働者以外での無期雇用に実効性がないことや、派遣元の本来業務である新たな派遣先の提供が含まれているなど、雇用安定措置に期待が持てないことは明らかです。
さらに、政府は、雇用安定措置の義務違反に対して事業の許可の取消しも含め厳しく指導することで派遣元事業主の履行を確保すると言っていますが、そもそも、施行日の直前に至っても当委員会の審議の中で、雇用安定措置の義務の始期・終期、対象派遣労働者といった基本的な事項についてすら答弁が錯綜する始末であります。このような状態で、厚生労働省が本気で雇用安定措置の履行を徹底させようと考えていると誰が信じるでしょうか。

第四に、派遣労働者の処遇については、均衡を考慮した際に配慮した内容に関する説明義務の追加など小手先の改正に過ぎず、派遣労働者の根本的な処遇改善策は講じられておりません。


以上が本改正案に反対する主な理由であります。
また、「修正案」については、国会審議を踏まえ、今まで申し上げた政府案の根本的な欠陥を直すものではありません。さらに施行日を9月30日とすることは、翌日から施行される労働契約申込みみなし制度を骨抜きにしたいという目的が露骨に現れており、みなし制度に対する派遣労働者の期待を完全に裏切るものであり、到底、賛成できません。
真に労働者保護のための制度改正を行うのであれば、10月1日に施行される労働契約申込みみなし制度によって、まずは、派遣先の都合の良いように使われている違法派遣の状態を解消して、その後、制度改正について議論するべきであります。そのような手順を踏まずに、違法状態を法改正によってむりやり合法に変えてしまうような手法は断じて許されるものではありません。
派遣会社の派遣会社による派遣会社のための法案であり、こんな法案絶対に通すわけにはいきません。

なお、いわゆる「同一労働・同一賃金法案」については、衆議院での修正の結果、派遣労働者への適用規定が、①均等ではなく均衡待遇でも良とされたこと、②立法による措置が担保されなくなったこと、かつ③1年以内ではなく3年以内と大きく後退してしまったことなどから、法案の実質的な意義が失われたため、反対です。

本改正案は昨年2度の廃案に追い込まれています。今回も再度廃案にすることこそが派遣労働者の保護につながる道であることを強く申し述べ、私の反対討論とします。

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詳細についてはコチラをご覧ください⇒ http://www.dpj.or.jp/article/107556