選挙公報発行しない自治体が存在することについての続報です。共同通信より。

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8県議選、公報なし
 条例なく見送り  経費理由に否決も

 都道府県議選 に立候補した候補者の公約や経歴を掲載する選挙公報を、
山梨、新潟、福井、愛知、岐阜、岡山、広島、山口の8県の選挙管理委員会は作成していないことが30日、共同通信の調査で分かった。39都道府県は作成し
ている。統一地方選の低投票率が問題になっている中で、有権者への判断材料の提供に差があることが浮き彫りになった。
  公選法は、国政選挙や 知事選の選挙公報の作成を、都道府県選管に義務付けている。しかし都道府県議選や市長選などには発行義務がない。発行する場合は条例が必要とされる。8県の選管は、選挙公報を作らない理由を「条例が制定されていないため」と説明している。
 新潟県では昨年12月、民主、公明、共産党などが選挙公報を発行するための条例案を県議会に共同提案したが、最大会派の自民党などが反対し、否決された。反対派は「経費と手間がかかる」などと主張した。
 各県選管によると、愛知、福井、山口の県議会でも公報発行のための条例案が否決されたことがある。
 新潟県、愛知県では、県庁所在地の新潟市議選、名古屋市議選の選挙公報は発行されている。新潟県選管によると、県議選と市議選が実施された4月の統一地方選の際に、県民から「なぜ県議選の公報は配布されないのか」との問い合わせがあったという。
 名古屋市選管も「県議選の公報が届かないと電話がかかってくることがある」としている。
 選挙公報は候補者の政策を比較したり、公約実行を点検したりする資料になる。
  地方自治に詳しい 新藤宗幸 (しんどう・むねゆき)
千葉大名誉教授(行政学)は「8県で選挙公報が作られていないのは驚きだ。候補者の意思を有権者に伝えなくては選挙が成り立たない」と指摘。「公報発行の
条例を作らないのは県議会や選管の怠慢だ」と話し、投票率低下の要因になりかねないと懸念している。

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公約重視、浸透せず
 選挙公報ない県議選

 【解説】山梨、新潟、福井、愛知、岐阜、岡山、広島、山口の8県の県議選で、選挙公報が発行されていないことは、公約重視という最近の流れが、都道府県レベルの選挙に十分浸透していないことをうかがわせる。
 4月の統一地方選は、地域活性化などをめぐる論戦が期待されたが、投票率は各地で低迷した。大阪都構想をめぐる大阪市の住民投票は高い投票率だったが、通常の地方選挙では投票所に足を運ばない有権者が増えている。選挙公報がなかった大半の県議選でも軒並み低下した。
 選挙公報は各候補者の公約や経歴をまとめて比較しながら見ることができる。有権者にとって誰に投票するかを決める際の重要な情報の一つだ。「公報が配られることで、有権者の選挙への関心も高まる」という意見もある。選挙管理委員会のホームページに掲載すれば、いつでも閲覧できる。
  「費用や人手がかかるわりには、効果が小さい」「公約はそれぞれの政党が発表している」といった公報不要論もある。しかし、民主主義にはさまざまなコスト
が必要だ。有権者の理解が得られないほどの費用なのだろうか。無所属や中小政党の候補者がいることも忘れてはならない。
  公選法により全ての選挙で 公報の発行を義務付けるべきだと主張する専門家もいる。国政選挙でも地方選挙でも、有権者は候補者をさまざまな観点から選ぶ。人柄、地縁はもちろん大事だ。しかし都道府県での選挙結果は、暮らしに身近な政策に直結する。公約の内容や活動実績に基づく選択を、選挙公報によって後押しするのは当然のことだ。