2月16日の千葉日報に「代理電話サービス」についての記事が掲載されていました。素晴しい取り組みだと思います。松戸市として、「代理電話サービス」を取り組んでいるのか調査してみます。

★★千葉日報(2月16日)から転載★★

「郵便受けに宅配便の不在連絡票が入っていた。すぐ届けてもらえますか」「内科の診察の予約をお願いします」…。

仙台市中心街にあるベンチャー企業プラスヴォイスの事務所。間仕切りされた小さな空間で、オペレーターがヘッドフォンとマイクを身に着けてパソコンに、向う。

耳の不自由な利用者からインターネットのテレビ電話を受けて、利用者の代わりに通常の電話をかけ、手話と話言葉の同時通訳をする「代理電話サービス」だ。

「これまで聴覚障害者は出前の注文もできなかった。このサービスなら、スマートフォン(多機能携帯電話)一つあれば、どこからでも電話をかけられる」。社長の三浦宏之(48)が説明する。

情報通信技術を活用して人と人をつなぐサービスは、三浦自身の人々との出会いから生まれた。

■ガス漏れ
「最低最悪の司会だった」。三浦は落ち込んだ。地元仙台んでの結婚式の司会業を営んでいた1995年ごろ、新婦がろう者の式を担当。ほかにも聴覚障害のある出席者が多く、得意の話術が全く通じなかった。
この体験が、三浦の人生を変えることになり。初めて目の当たりにした手話に興味を持ち、勉強を始めたのだ。
折から、電子メールのできる携帯電話が登場。「知り合いになった聴覚障害者の役に立つ」と、電話販売も手掛けるように。障がい者の要望をまとめて通信会社に提言するなどの活動を重ね、顧客を全国に広げた。
2001年ごろのある夜。ネット経由のテレビ電話を一緒に研究していた市川市の藤井理仁(45)が、慌てた様子で三浦のパソコンの画面に現れた。「歯科技工の仕事に使うガスが漏れているらしい」。耳の聞こえない藤井の手話を読み取りながら、三浦は急いで119番通報。駆け付けた消防士と藤井の会話も、遠く約300キロ離れた仙台から通訳した。「聴覚障害者がリアルタイムでコミュニケーションできた。感動しました」。代理電話サービスの原型が誕生した瞬間だった。

■鎖のゾウ
三浦は02年、店舗や官庁にテレビ電話端末を置き、訪れた聴覚障害者との会話を遠隔通話する事業を開始。翌年には、テレビ電話はもちろん、メールやファックスでもやりとりができる、障害者個人向けの代理電話サービスに乗り出した。さらに、障害者から企業のコールセンターへの問い合わせを仲介する業務も請け負っている。
代理電話の料金は1回15分まで315円。回数無制限で月額5250円というコースもある。毎日のように利用している宮城県大和町の理髪業、田中透(48)は「ものすごく便利。生活が変わった」と目を輝かせる。「『お金がかかるのはちょっと』という人もいるが、このサービスがなければ、出掛けなきゃならない。足代と同じですよ」
国内の聴覚・言語障害者は厚生労働省の06年の推計で約36万人。高齢化が急速に進む中、耳が遠くなったお年寄りも加えると、膨大な人口になる。誰でも年を取れば、代理電話サービスが必要になるかもしれない。
しかし、同様のサービスに参入した会社の中には、利用者が集まらず、早々に撤退したところもある。プラスヴォイスでも代理電話の利用者は約千人にとどまり、国の助成金を受け、オペレーターらが待機中に別の仕事をすることで、採算を合わせている。
なぜ利用者数が伸びないのか。全日本難聴者・中途失聴者団体連合会理事の小川光彦(49)は、こうしたサービスの存在や公用が知られていないことや、有料というハードルに加え、聴覚障害者固有の事情を指摘する。
「子どものころから鎖につながれたゾウは、成長して鎖を引っこ抜けるようになっても、逃げようとしない。聴覚障害者にも『電話はできない』といった固定概念がある。私自身、代理電話を使って世界が広がるのを実感するまで、自発的に連絡を取ろうなんて思いませんでした」

■これから使う
東日本大震災の直後から、三浦は岩手、宮城、福島3県の聴覚障害者を対象に、代理電話サービスを無料で提供。昨年9月以降は日本財団(東京)が費用を負担し、プラスヴォイスが事業を受託する形で継続している。
だが、欧米諸国などでは、同種のサービスは通信会社や政府が無料提供するのが当たり前だ。聴覚障害者の自立と社会参加を保障するため、関係者は日本でも制度化するよう求めている。
「きれいごとを言うわけじゃないが、営利より使命感でやってきて、(聴覚障害者と健聴者の)情報格差をなくす仕組みはつくれた。後は意識の問題だ」と三浦。役所の担当者らから「テレビ電話を使う聴覚障害者は何人ぐらいいるのか」などと聞かれるたびに、こう答える。「みんな、これから使います」