新九郎、奔る! | 香散見草

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 北条早雲といえば戦国時代の下剋上を体現した人物というイメージがあった。一介の浪人から出世し、後北条家の祖、駿河の大名にまで上り詰めたとされる。しかし近年、歴史研究が進み、実は室町時代に幕府の高級官僚であった伊勢氏の一族出身であり、駿河を本拠として大名となったのも、幕府の意向を受けた行動や合戦の結果と考えられている。

 そういった様々な新しい説を取り入れた漫画を読んでいる。ゆうきまさみ氏による『新九郎、奔(はし)る!』である。新九郎は、早雲の通称。時は足利義政時代の後半、応仁の乱の少し前、新九郎がまだ少年の頃から話が始まる。単行本は今、新九郎三十一歳、長享元年(1487)の今川家の家督相続をめぐる戦いの直前まで進んでいる。

 織田信長以降の戦国の歴史は知っていても、それよりも前はあまり知らなかったのでとても面白く読んでいる。漫画のすべてが史実通りではないかもしれないが、大まかな流れを掴むには良いような気がする。ちらりと能の役者が登場するのも興味深い。室町時代末期の京や関東の複雑な勢力争いを懸命に真面目に生き抜こうとする新九郎の姿がすがすがしい。早く次の巻が読みたいものだ。