スタイリスト久保田さんにお世話になりました。
今回はヴィレヴァン&パルコさんとのコラボだということ、また渋谷という立地を考えて
「ショーを抜け出してもそのまま遊びに行けるかわいい歌舞伎スタイル」という、また久保田さんを苦しめてしまうようなことを企画(笑)
【本番に至るまでの道のり】
まずどのお役をショーに出したいかを話し、その物語の背景について久保田さんに説明。それが現代に置き換えても無理がないか、可愛くなるかをファッション的観点で確認していただき、更にパルコのテナントの服で再現できるかを交渉していただく、、、、と様々なハードルはありました。
久保田さんはいまじナイト以来、歌舞伎衣裳の無限の可能性を感じているようで夏に行われた吉右衛門さんの写真展にご一緒した時も、「この衣裳はどういう意味なの?」とか「歴史的にこうなの?」と質問攻めしてくれるほど興味をもってくださり、だからこそ今回も全幅の信頼をもって無茶振りさせていただくことができ(深くお辞儀)
久保田さんの驚くべき着眼点や、豊富な知識とセンスで、9体の歌舞伎コーデが完成しました!
久保田さんのブログで、元のキャラクターと、スタイリングのポイントについてまとめていただいているのでこちらを是非ご覧いただければと思います。
当日はもとになった歌舞伎でのキャラクターも知っていただければと、演目について簡単に解説したフライヤーを配らせていただきました。それを踏まえ9体について、こぼれ話も含めご説明します。
(人物名)『登場する作品名』
[簡単な解説]
です。参考にしてくださいませ。
1)法界坊(ほうかいぼう) 『隅田川続俤』(すみだがわごにちのおもかげ)
[エロ乞食坊主(笑)しまいには人を殺す悪党だけどどこか憎めない三枚目のキャラクター。]
これは久保田さんが「重ね着がやりがいがありそう!」といったのが発端だった気がする。当初は、役の設定自体がキタナめなイメージだし地味だし若いモデルさんが着るようなスタイリングと合う?と実は一番不安だったスタイル。
が、それを逆手にとって抑えた色でまとめるとこんなにおしゃれに!
ニット帽とか随所に使ったゴールドとかが法界坊の社会のはみ出し者の要素になっあてる。
名付けて「ちょい悪ロンドンガール風 法界坊」
2)赤姫(『本朝廿四孝』の八重垣姫(『金閣寺』の雪姫、『鎌倉三代記』の時姫など)
[歌舞伎に出てくるお姫様は必ずしも赤の衣裳というわけではないがその役柄を「赤姫」と総称する。行動派で情熱的なお姫様が歌舞伎には多い。]
ただ歌舞伎の赤姫って以外と突き抜けてたりするから、単純にフリフリドレスに変換してもちょっと違う。そこをシルエット重視のワンピースにすることで赤姫らしい若さとかおちゃめな感じが出せたのではないかと。しかも明るい赤ではなくボールドにしたこと、アクセサリーをゴージャスにしたことで、ちゃんと血筋の良さとか品が保たれていると思いました。おきゃんなドレッシー赤姫の完成。
3.4.桃井若狭之助、塩冶判官『仮名手本忠臣蔵 大序』
[共に室町幕府に仕える大名。将軍の執事職たる高師直に罵られ、キレそうになるのが若狭之助、それを抑えるのが塩冶判官。この後、師直の嫌がらせの矛先が判官に向きご存知『忠臣蔵』の筋となる。]
これは候補写真をみた久保田さんが「双子コーデだね」と興味津々で、かつモデルさんに双子ちゃんがいるということで決定。(三つ子だったら師直も入ってたかも)
秀逸なのは、烏帽子をニット帽に置き換え、殿中においてキーアイテムである長袴をちゃんと踏襲してロングスカートに置き換えた点。
同じくニット帽も法界坊はグレーの装飾なしなのに対し、こちらはキラキラつき(ビジューというらしいっす)で、ちゃんと格が上なことを計算している!細かい!元の話のツボもおさえつつ コーデのバランス的にも必然性があるとこがすごい。
5.お富『与話情浮名横櫛』(よわなさけうきなのよこぐし)
やくざの妾(めかけ)でありながらイケメン若旦那と浮気。それが親分にバレて相手は体中を三十四ヶ所も切られる。お富も入水するがお互い命をとりとめて、ごろつきとなった与三郎(浮気相手)が金をねだりに行った先で再会…と波瀾万丈な人生を歩むお色気お姉さん♡
歌舞伎の女形さんと同じく、まさに肌を露出するという方法でなく、色気を出すことに成功したのがこのコーデではないでしょうか。
その秘訣はお富さんと同じく、異なる縞の合わせ技。
お富さんが着物と帯を縞×縞にあわせるのと同じように、太いストライプと細いストライプをかけあわせたらあら不思議。
髪もアップにしてファーのストールも足してみたら
「いやさ、お富。久しぶりだな~」思わずいいたくなっちゃいました。
→つづきます