歌舞伎生活100 | 歌舞伎ライター 関亜弓「そば屋のカレー日記」

歌舞伎ライター 関亜弓「そば屋のカレー日記」

俳優、ダンサー、歌舞伎ライター関亜弓による大衆向日記です。

より濃厚な歌舞伎生活が始まりました。

初稽古なもんで、
緊張して、門前仲町早く着いて、
つい深川不動にお参りしてしまったよ。

で、

ついおいしそうな豆大福買ってしまって、
すぐ食べるのに「持ち帰りで」とかいっちゃったよ。

お腹一杯、胸一杯で稽古場へ。

床に手をついて「よろしくお願いいたします」と深いお辞儀をしたとき
戻ってきたというか、始まった気がした。

何度もお会いしているものの、
市川新蔵師匠に教えを乞うのは初めて。
この日は読み合わせだった。

お嬢(役名)の科白は高い女声から始まって、
男だと正体をばらすところで急降下する。
しかも長台詞は男声だし粋な江戸弁だから、
「ほろ酔い気味で練習したら」と新蔵さんにアドバイスをいただく。
これからは一杯ふっかけてから稽古に挑もうかしらんと真剣に思う。

そういえば、日中青年友好交流会で歌舞伎をやることになった。
リハーサルで、初めて早稲田大学の大隈講堂のステージを踏みしめてみた。
関係ないけど、「大熊行動」って変換すると捕獲したくなっちゃいますね。

あと先日、家で一人稽古していたら
熱が入ってしまい、多分大きい声がでていたのだと思う。
なんと上の階の人がピンポーンってきた。


私はそのとき凍りついた。

そして幾多の恐るべき光景が頭に浮かんだ。

このドアを開けると
「おめーさっきからうっせーんだよ 何が
”こいつぁ春から縁起がいいわぇ”だよ」と木刀で殴られるとか

近所で変な噂がたち、
「あそこの家から”おれが盗んだこの百両”
とか聞こえてきたんですよ」と後ろ指さされるとか

二軒先のバーのマスターに「営業妨害で訴えますよ」と
損害賠償求められるとか、

一瞬のうちに私の妄想は膨らんだ。

もう、こうなったら開き直ってリアルかぶき者として
生きていくしかない。

そう覚悟してドアを開けた。

すると






「すいませーん、洗濯物落としちゃったみたいなんですけど」
と若いにーちゃんがすまなそう告げたのだった。


※この話はノンフィクションでありますが、
実際の人物とはさして関係の無いものです。