海照寺(磯子区坂下町4-19)

地蔵様の温顔がお出迎え、
中興したのは寛永の頃「海照寺」


真言宗・海照寺のご本尊が地蔵菩薩ということを『磯子の史話』
で知り、このお寺を探訪して地蔵様のことなどを調べてみました。
開山した年代はわかりませんが、最初の記録としては、お堂を整
備し衰えていた寺を興したといわれる尊珍の墓に「寛永八年五月
十四日入寂」と記してあり、同十年には宝生寺の末寺と記された
記録が残されていますから、この頃には寺としての役割をしてい
たことがわかります。


さらに『新篇風土記』によると、「天保の頃(1830~)の本
堂は、間口六間(約11m)、奥行五間半(約10m)の草葺、
庫裏は五間と六間の草葺」とあり、立派なお寺として郷土にしっ
かり根付いていたといえるでしょう。


真言宗のお寺には、地蔵菩薩、不動明王、弘法大師像が祀られて
いますが、海照寺について『史話』では次のように記されていま
す。
(要約)


Photo_2 ご本尊は地蔵菩薩立像(写真)で、身の
丈三尺八寸(約1.14m)、台座一尺
(約30cm)の木像で、赤せんだんと
いう珍しい材で刻してあります。聖徳太
子の御作と伝えられていますが、確証は
ありません。作風から室町の初期か鎌倉
の末期頃のものと見られ、地蔵様の御顔
は誠に温顔、ふくよかな輪郭・眉・目・
口もとなど円満な“地蔵顔”そのもので
す。杖をついている地蔵の姿は、諸国巡
錫の弘法大師の御姿そのものといえるで
しょう。


不動明王像は、丈は約45cm位の木製
立像で、真言弘法(くぼう)の守り本尊
です。弘法大師像は、高さ約21cmの
古い坐像です。門前の石標に「弘法大師
に二十一ヶ寺の第十四番霊場、市内観音
霊場の第二十五番札所」とあります。ま
           た、昭和9年の大師1100年祭にちな
んで、新四国東国八十八ヶ所霊場が設置され、その五十一番霊場
となりました。

堂内には、江戸時代中期に描かれた高野山全景図の三枚のうちの
一枚が現存、思わず魅入るほどの素晴らしい絵です。「いつでも

拝観できますからぜひどうぞ」とご住職様からお言葉をいただき

ました。
ところで、このお寺の墓には幕末から明治にかけて貢献した人の

名があり興味を惹きました。一人はこの土地の旧家で初めて西洋
野菜を作ったことで有名な清水辰五郎氏、もう一人は根岸小学校
の前身で志数学舎の初代教員をしていた石川喜平先生で、墓碑に
は多くの教え子たちの名が刻まれていました。