全国ツアーが始まった。


HELLO ENDING



数式と地図とパズルを見ると頭がぎゅーっとなる私は
【日本地図を覚える努力】というものを23年間一度もしないまま
全国を旋回する車へ乗り込んだ。

「神戸って・・あれ、どこだっけ?」

「・・・兵庫県だよ」

移動の車の中では私のココハドコ?に対して
中じん先生の日本地図講座が繰り広げられた。

大学に行きながら塾の先生をしていた中じんは、
世界の終わりの中でもいたる所で先生になる。

「へーそうなんだ・・」

ちなみに深瀬も生徒である。

かくして名古屋は愛知県であり、仙台は宮城県であり、
金沢は石川県であり、甲府は山梨県である という授業をも受けながら
世界の終わりの長くて短いツアーはスタートした。


ツアーのお供には
題して「全国ツアーをしながら日本地図を覚えよう!」企画の為に
大阪に住む小学生の従姉妹・チナツ が作ってくれた地図を持って行った。

HELLO ENDING-chizu

話の語尾に ウッキー と付けるキャラクターと共に全国旋回。

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「さおりちゃん、空が凄いんだよ!スカイデッキにいこうよ」

北海道へ行くフェリーの中で、船酔いでふらふらの私をつかまえて
深瀬は極寒のスカイデッキへと続く扉を開けた。

寒いのやだなあ と思いながら外に出て、空を見上げた。

「・・・・・」

真っ暗である。

「あ、何も見えないでしょ?あのね、そのうち分かるから。」

言われるがまま、ベンチに座り360度の海原を眺める。
海は月を浴びて、光の道を作っていた。

「歩いていけそう」

写真で何度も見たことのあるような光景なのに、月はどの写真とも違っていた。
情報は体感して初めて鮮度を持つのだ。鮮度を帯びる瞬間。



「あ・・・あ・・・!」

数分間、反応を待っていた深瀬の横で
私はやっと頭上にたくさんの星を発見した。

「なんでなんで?さっきは無かったよ?」

「目が慣れないと見えないんだよ。」

「そうなの?」

「うん」

「何でだろうね??」

「そういう事って、世界にたくさんあるよ。」

「・・・・」


本当は光っているのに、すぐそばに見えるはずなのに、
世界を見る視点が違うだけで気づく事が出来ないこと。


「そうだね。うん・・そうだ。」


それから少し、無言でベンチにねっ転がって星を見上げた。



気づけよ、とかお前が見てるモンは違うよ、とか
そんなメッセージを込めた曲なんか一曲も作って無いけれど
世界の終わりの曲はきっと
気づいたら人生楽しいよっていう、それだけの曲。

だって、頭上に輝く星空に気付いた方が、人生楽しいでしょ。

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ほとんどの場所が「はじめて」のツアー。

何枚CDが売れたとか、なんとかで何位になったとか、
そういう「情報」っていう入れ物の中身には

「体感」という名のたくさんの手紙やメッセージや
笑顔や涙や歓声や上がった拳たちが入って

この数カ月に想い出という名前の記憶を作ることが出来た。

嬉しかった。楽しかった。

ありがとう。