「クマがいるね!ほら、あっちに・・も・・あれ」

幕張メッセの天井がどの位高いか、想像がつくだろうか。

スタージ と ステージ裏 を仕切るカーテンは
哀しきかな、メッセの天井には倍の高さをもってしても届かないほど低く

なんとステージ裏が丸見えである。


「ほー凄いね、クマがいっぱいいる」

「あ、何かあっちで飛んでる人がいるよ」

近寄って見てみた。

「お客さま~こちら側はご覧にならないでくださいっ!」

怒られた。



上演が始まるまでに、販売機でジャスミンティーと伊右衛門を購入すると
(団長は伊右衛門は一味違うと言い張る。)
音楽とともに ボリショイサーカスのマスコットキャラクターが現れます、という
アナウンスが入る。

「ミーシャちゃんとマーシャちゃんです!」



さて、クマ と称するこのキャラクター達の雰囲気の形容は、
非常に困難を極める。

後にラブや中じんに「見せたかった」と語ることになるこのクマ。

まず、愛らしくない。
とにかく、全然可愛くないのである。

「え、分からないよ、どんな感じなの?」

「んーあれ何て言ったらいいのかなあ。ねえ、団長。」

「まあ、まず姿勢が超悪いよね」

猫背というよりは、もはや チェケラッチョ に近い姿勢のミーシャとマーシャ。

歩いて手を振っているとも、踊りとも言えないその動きが非常に眠そうであり
一体どの方向に向けられているものなのか全く分からず
もはやそこには独自の世界観が存在しているようにさえ思える。

「これ、ラブ絶対好きだよ 笑」

「あーそうかも!」

ラブというのは、下らないものが好きである。
本人曰く 面白いもの であるらしいのだが、私にはとてもそうは思えない。

「見てこれ」

「なに?」

「ジャン!ピザマンの具入りドーナツ!」

こういう物をわざわざ購入する。

買出しに行った際にもプラスチックで出来たガムテープのような形の物を買ってきて
100何メートル飛ぶんだとか何とか言って帰ってきた事があるが
一体この東京のどこでそんな小さいものを100何メートルも飛ばすのか。

片づけをしている際に団長がそれを見て言った。

「おい、このゴミ捨てて置けよ」

「ゴミじゃないよ、100何メートル飛ぶんだよ」

「使わないだろ。お前、ゴミ買ってきてゴミにしやがって。地球に謝れ。」

「使うよ、さっき飛ばしてきたよ!」

ステイキッズな君は
きっとミーシャとマーシャも気に入ったと思うな。


上演が始まる前に突っ込みどころ満載で開幕したボリショイサーカスであったが、
犬と犬が手をつないでそれを犬が飛んだり(これは結構凄いよ)
ミーシャ達に負けず劣らずやる気のないクマがバイクに乗ったり
長い棒を頭に乗っけた人のその棒に登ってさらに上に立ったりで

古式ゆかしいサーカスは 子供達の声援に溢れていた。

続く