脚本家が好き勝手できたとは思えない 後編 | 世界一難しい恋の話

世界一難しい恋の話

2016年04月13日スタート
日本テレビ系列水曜22時
連続ドラマ「世界一難しい恋」の応援・感想ブログです。

まるっきり昨日の続きの記事です。

当初、SNSの片隅でスルーされていた愚痴があれよあれよという間に事態を悪化させ、最悪の結末を迎えた例の事件について。

発端となった、SNSで愚痴をもらした脚本家が「鍵のかかった部屋」の脚本家だったために、ブログ主もスルーできなくてあれこれ語ってきたあの事件についてです。

正直、発端となった愚痴についてはいかに大野智の存在を教えてくれた恩人であっても擁護のしようもないものですが。何の関係もない……芸能界に居たこともない第三者が一方的に「原作クラッシャー」と叩いているのを見て、「いや、脚本家にそこまでの権限は無いだろ」と思ったブログ主が妄想で反論する、そんな記事です。

 

さてさて。前日の記事では、件の脚本家さんが手がけたドラマの中でも最も叩かれている&次点で叩かれている「ミステリという勿れ」「ビブリア古書堂の事件手帖」について反論してましたが(※ブログ主の主観です)

今回いよいよ、「鍵のかかった部屋」について。

あのドラマこそ、原作こそ全て! 原作こそ至高!! という方から見れば「原作クラッシャー」以外の何者でも無かったと思います。はっきり言って、トリック以外、ストーリーはもちろんのこと榎本も純子も別人もいいところです。芹沢なんかそもそも原作にはいません。

でも、今回様々な作品がやり玉に挙げられている中で脚本家の様々なドラマが批判されてきましたが、「鍵のかかった部屋」がそこに名を連ねることはほぼありませんでした。

それどころか、「鍵部屋は面白かった」と擁護してくれている人まで、ヲタに限らずちらほら見かけましたので。やはり脚本が原作の設定のままだったかどうか、は問題の本質では無いと思うのですよ。

 

今回の問題は、原作者から「原作通りにしてくれ」という要望が上がっていたのに、その要望が通っていなかったこと。

「鍵のかかった部屋」がそこまで問題視されていないのは、原作者自ら「トリックさえそのままなら後はどう変えてくれても構わない」と名言していたから。そして改編内容がドラマとして十分に面白くて、原作者自らドラマにカメオ出演するくらいに気に入って下さったから。

 

この際、原作者からの要望が脚本家に本当に通っていなかったのか、は置いておきます。ブログ主には知るよしもない。原作者は日テレのプロデューサーとしか会えなかった、と名言していたので、間に挟まれたこのプロデューサーが伝えなかった可能性は日テレから声明が出てない以上ありうることです。

ただ、原作を忠実に再現して大ヒットしたドラマ……って、過去にそんなに例が無いと思うのですよ。ブログ主がぱっと思いつくのって「逃げるは恥だが役に立つ」くらいです。あのドラマだって、全くオリジナル要素が無かったか、と言われれば、原作のエピソードを端折ったりアレンジしたり、という部分まで含めれば改編されている部分はあると思います。

例えば逃げ恥と同じTBSの大ヒットドラマ「義母と娘のブルース」「私の家政夫ナギサさん」も、原作とドラマって全然違います。そもそも原作が、連ドラにするほどボリュームが無い作品なので、脚本家のアレンジが随所に入りエピソードを膨らませまくった上で大ヒットしています。逆に、膨大なボリュームの原作を上手くエピソード端折ったりまとめたりしながらも重要なポイントだけは外さずヲタから絶賛されたNHKの「大奥」みたいな例もあります。

 

「鍵のかかった部屋」は、あえて言えば「私の家政夫ナギサさん」が近いアレンジと言えると思います。

原作よりも若干幼めに描写される主人公、エピソードを膨らませるために投入されるオリキャラ、原作の骨子は残しつつもエピソードを膨らませまくった結果、全体的にストーリーが別物になっていく、とポイント挙げてくと被るところが多いです。

昨日も書きましたが、多分鍵部屋、最初は大野智のキャスティングありきで始まったドラマと思われます。

原作は後からついてきて、そして主役である「榎本径」を大野智が演じるに当たって、原作ではセキュリティショップの店長(SPでこの設定引っ張られてきましたが)から警備会社の社員に変更、青砥純子は中堅どころの弁護士から新人弁護士に変更。性格も、榎本は原作ではどっちかというと多弁ですが無口なヲタクキャラに、純子は原作ではそれなりに世慣れしていて泥棒? と疑いつつ榎本を上手く利用する、大人の付き合いに徹していますがドラマではついぞ榎本を疑うことなく一途に信頼する天然キャラに。ついでに榎本が泥棒って原作では名言されてますがドラマではあくまでも「もしかして?」で留まって結論出ませんでした。

何でこんな変更がかかったのかなあ、と想像すると、まず真っ先に浮かぶ理由が、原作のボリュームがドラマ1話に足りていない、が上げられます。

1話が「鍵のかかった部屋」なわけですが、原作ではこの話、短編です。この短編を90分SPに膨らませる必要があった……いや1話に限らず、全体的に短編~中編が多い原作を全11話、初回と最終回が90分SPのボリュームに膨らませるための措置だったんだろうなあ、と想像がつくわけです。

まず1話で榎本と弁護士ーずが知り合うわけですが、あの1話の冒頭で主役3人の性格と能力がすごく詰め込まれていたと思うのですよ。

これ、とあるバラエティの企画で言われていたのですが、探偵役ってあんまり賢すぎてもすぐ事件解決して盛り上がりに欠けるし、かといって察しが悪すぎると物語が動かない。この折衷案として、榎本の「ものすごく頭が良いけれど、無口で自分から口を開かない、首を突っ込まない」というキャラが作られ……本当に勝手に事件に首つっこんで読者置いてきぼりで推理を進めていくどこかの見た目は子ども、頭脳は大人な名探偵とか名探偵の孫とかに見習わせたい……その榎本を事件に引っ張り込むキャラである青砥純子は、榎本に解説させる役回りとして若干迂闊というか、おとぼけキャラに設定され、キャスティングが戸田恵梨香さんなので年齢的に中堅~ベテラン弁護士は無理があるので新人弁護士に設定変更され、新人が一人で部外者巻き込んで事件に首を突っ込むのは不自然なので、二人を見守る立場のベテラン弁護士である芹沢が設定されたのかな、と想像しました。

1話は本当に、3人揃わないと解決に導けなかったのだからよくできた初回だったよなあと今思い出しても感心します。青砥純子がいなければ榎本が事件に関わることがなかったし、榎本がいなければ事件が解決することは無かったし、芹沢がいなければ犯人の自白の決め手となる遺書の矛盾に気づけなかった。全員それぞれに欠点があり、全員の長所で互いの欠点を補いあってる完璧なチームワークで事件を解決していく様が、今思い出しても本当に本当に面白かった。原作者が満足してくれたのも頷けると言うものです。

何度も言うようですが、キャスティングの権限なんて脚本家にあるとは思えないので、「鍵のかかった部屋」で言うなれば大野智、戸田恵梨香さん、佐藤浩市さんというメインキャスト陣は最初に決まっていて原作から改変されたキャラは役者に合わせたと思われるので、脚本家が「原作を壊した」というのは、やっぱり違うと思うんだけどなあ……と、ブログ主は思わずにはいられない。

そして「トリックだけは原作そのままに」という原作者の要望を、「鍵のかかった部屋」ではきちんと守り通していたのですから。原作者の要望を無視する、というのも……まあ「鍵のかかった部屋」当時と今では、脚本家の地位もだいぶ変わってるからここは断言は避けておくべきか。

 

とにかくずらずら書いてきましたが。ドラマ化に当たって原作の内容をどう改編するか、が、脚本家の一存で決まるとは思えない。

とりあえずブログ主の結論はここに落ち着いた、とだけ書いてこの記事を終わります。