日本は、近年、デジタル機器の貸与など、教育のデジタル化を進めようとしている。

 

こうした傾向は、近年、海外で流行していた。日本も、そうした波に乗ろうとしているのであろう。

 

しかし、その海外では、教育のデジタル化への評価は変化してきている。

 

例えば、フィンランドについて書く。

 

世界的に高い評価を受けているフィンランドの教育現場でも、少し前まで、教育のデジタル化は進められていた。しかし、近年は、フィンランドの子供たちの学力が徐々に低下しているという。

 

今では、教育現場における従来型の学習手段、例えば紙とペンの価値が見直されているらしい。

 

例えば、リーヒマキという街の学校の例が挙げられている。子供たちは、タブレット等ではなく、紙の本とペンを使って勉強をしている。

 

以下、関連する記事の内容を一部引用する(<フィンランドの学校で始まった「脱デジタル化」 ノートPC無償配布も、学習成果は低下>Reuters 2024年9月11日配信)。

 

 

<「スクリーンの前で過ごす時間は最小限にすべきで、何時間も費やすのではなく、それより少ない時間にするべきだ」――リーヒマキの取り組みに協力する専門家はこう話す

 

臨床神経心理学者 ミンナ・ペルトプロさん

「脳はマルチタスクに非常に弱く、特に若年層ではなおさらだ上手に処理できない。(子供たちは)コンピュータで数学をして、インスタにメッセージがないか確認しに行き、また数学に戻って、さらにスナップチャットにやって、また数学に戻るということをやっている」

 

フィンランドの十代の若者は現在、1日平均6時間もスクリーンを見つめている。ペルトプロさんは、デジタル機器の過度の使用は、目の問題や不安の増大など、身体面・精神面両方のリスクを伴うと指摘する。フィンランド政府は、授業中に携帯電話などの個人用機器の使用を禁止する新たな法律の制定を計画している>

 

 

筆者は教育のデジタル化の専門家ではないが、このことは何となく分かる。

 

例えば、東京大学とNTT経営研究所の共同研究で、電子機器よりも、紙の手帳を使う方が記憶の定着などにより効果的であることが研究で示されている(<脳科学で実証!「画面」に勝る「紙」の優位性とは?>RICHO ダイレクトマーケティングラボ 2022年9月20日配信)。

 

個人的な経験でも、パソコンやスマートホンの画面をずっと見ていると、頭がぼうっとしてしまうことがある。紙の本を読んでいる際には、こういう感覚はない。

 

やはり、デジタル機器の長時間の使用は、脳にはあまりよくないのだろう(ちなみに、睡眠にも良くない。睡眠は、記憶の定着と関連している。悪循環である)。紙もデジタルも長短両方あるが、少なくとも学習(特に記憶や創造性と関連)については、従来型のスタイルの方が優れていることは多いと思われる。

 

こうしたことを参考にすると、教育の過剰なデジタル化はよくないという結論に結びつくのは自然なことだと思う。そして、フィンランドがすぐに対策を講じたのは、素晴らしいことだと思う。

 

それに比べて、日本の教育は?

 

既に書いたが、日本の教育は膨大な予算をかけて、デジタル化を進めている最中である。

 

日本の政策は、海外と比べると、変化への対応が遅いことが多いと感じる。一度始めると、もし欠点が見つかったとしても、迅速に対応して修正することが少ないように思う。

 

フィンランドの例について、教育のデジタル化を先に進めた国が行き着いた結論として、日本も参考にすべきだと思う。

 

今からでも遅くはない。教育の過剰なデジタル化は、止めるべきだろう。膨大な予算を無駄に費やして、学習効果を低下させるような結果になってしまっては、どうしようもない。子供たちの未来のためにも、ここで一旦立ち止まり、最適な学習環境について、もう一度検討すべきだと思う。

 

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