言語を学ぶことは、興味深い。

 

例えば、英国在住の作家である、ブレイディみかこ氏の著書に、以下のような内容がある(「ブロークン・ブリテンに聞け 社会・政治時評クロニクル2018-2023」、ブレイディみかこ著、講談社文庫)。

 

 

<むかし、英国でチャータード・インスティチュート・オブ・リングィストという機関の試験を受けて翻訳者資格を取った。で、そのときにロンドンの夜間大学の試験準備コース講師から最初に教わったのは、ユナイテッド・キングダム(UK)のことを「イギリス」と訳してはいけないということだった>

 

 

これは、なぜか。

 

「イギリス」という言葉は、日本人が過去にイングランド(あるいはイングリッシュ)という言葉を耳にして、それが変化したものであり、イングランド以外の地域を含んでいないということになる。そのため、UKを翻訳した言葉としては適さない。

 

実際、公的機関の書類では、UKを日本語に翻訳する場合には「連合王国」という用語が正式名称とされている。

 

しかし、連合王国だと一般的には分かりにくいので、「英国」と翻訳するのが適切ということらしい。

 

これには、なるほどと思った。もっとも、個人的には、分かりやすさも含めて「イギリス」という言葉を普段よく用いているが(このブログも含めて)、もし仕事で翻訳をするのであれば、「英国」と訳すのが望ましいということになる。

 

他にも、上記の本には興味深いことが書かれていた。

 

例えば、「夕食」を表す英語が挙げられる。

 

日本の学校教育では、何の疑いもなく、dinnerと教えるだろう。しかし、実際には、夕食を表す言葉はdinnerとは限らない。

 

このことは、英語の辞書にも書かれている。

 

例えば、ジーニアス英和大辞典には、dinnerについて、「正餐(さん), (1日のうちで主要な)食事、ディナー; 《広義》食事, 料理(meal)と書かれている。

 

この、1日の中で主要な食事という部分が、ポイントである。

 

ブレイディみかこ氏の本の記事によると、夕食については「ディナー」、「サパー」、「ティー」とそれぞれ異なる呼称を用いる人がいる一方、昼食を「ディナー」と呼ぶ人もいる。

 

このことについて、ブレイディ氏の本によると、階級の影響もあるらしい。

 

ディナーは1日の中で主要な食事ということを思い出していただきたいのだが、例えば労働者階級は昼に主要な食事をとっていたので(午後の仕事時間が長いから)、昼食をディナーと呼び、夜は軽い食事で済ませるので、ティーと呼んでいたという。

 

夕食の呼称について、地域の影響もある。北部の人はティー、南部の人はディナーと呼ぶ大まかな傾向はあるらしいが、もちろんそうではない人たちもいる。

 

他にも、様々な要素が夕食の呼称に影響する。

 

しかし、ここで疑問に思う人がいるかもしれない。例えば、英国に一定期間滞在した経験がある日本人の方で、dinner以外の表現を聞いたことがないという人はいるかもしれない。

 

上記の本によると、外国人と接する機会が増えている現状では、夕食についてdinnerで統一しないと通じにくいということがあるらしい。そのため、dinnerを使う割合が増えているのだろう。

 

それでは、英語の表現は、今後シンプルなものに変わっていく傾向にあるのだろうか。

 

それが、そうとも言えないらしい。例えば、若い世代に流行っているという、MLE(マルチカルチュラル・ロンドン・イングリッシュ)が挙げられる。

 

上記の本の記事に書かれているが、息子さんがスマホに打ち込んでいた言葉に、著者は仰天したという。

 

以下の内容について、皆さんは意味が分かるだろうか。

 

<Bare tings to do innit>

 

これは、「I have a lot to do」という意味らしい。英語は得意だと自負している日本人の方でも、意味を理解するのは難しいだろう。

 

英語の世界は、奥深い。深く知るためには、継続して勉強していく必要がある。こうした努力を楽しみながら、今後も英語に接していきたいと思う。

 

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