英国在住の作家である、ブレイディみかこ氏の本を先日読んでいて、面白い内容を見つけた。

 

以下、関連する内容を一部引用する(<転がる珠玉のように>ブレイディみかこ著、中央公論新社、2024年)。著者の息子さんが、著者に話しかけてきた場面を描いている。

 

なお、ブログの形式でも読みやすいように、行間は一行ずつ開けさせていただいた。

 

 

<「すごいよ、これ。見て」

 

と言って、自分のスマホをわたしに見せる。なんでも、昨今はやりのチャットGPTに英語でわたしのことを聞いてみたのだという。

 

「わたしは日本語のライターだから、英語で聞いてもAIが知ってるわけないじゃん」

 

余裕でそう言ったのだが、先方はわたしのことを知っていた。というか、正確に言えば知っているふりをしていた。

 

「ブレイディみかこ。英国ブライトン在住のライター」

 

そこまではいい。しかし、問題はここからだった。

 

「彼女の代表作は『Impossible Love』。英国に渡った日本人の女性と、英国人の男性が恋に落ちて結婚し、生まれ育った文化の違いや価値観の壁にぶつかり、徐々に心が離れていく歳月をリアリスティックかつユーモラスな筆致で描いた悲恋の物語」

 

わたしはそれを読んでのけぞった。

 

「なんじゃ、こりゃー」>

 

 

ブレイディみかこ氏は、こんな作品を書いていないという。しかし、チャットGPTは、「自信満々で」このような答えを書いてきた。

 

生成AIは、「嘘」をつくことがある。専門的には、ハルシネーション(幻覚)と呼ばれるらしい。これは、様々なニュースで見かける。

 

例えば、2023年5月31日の読売新聞に、海外の弁護士がチャットGPTを使って準備書面を作成したところ、実在しない多数の判例が書かれていたことが判明したという記事が掲載されていた。

 

https://ameblo.jp/sekainokesiki/entry-12812130292.html

 

生成AIは、まだまだ発展途上である。関連する様々な情報を見る限り、これは事実だと思う。

 

それなのに、昨今では、AIについて、様々な分野への応用を含めて、「役に立つ」側面を強調するようなニュースを結構見かける。

 

こういうニュースは、宣伝としての意味合いもあるのだろう、AIの便利な部分に偏った内容であることが多いと感じる。新しい技術はいつでもそうだが、実際には欠点がまだまだあるのに、そうした内容は後回しにされる。ビジネスの臭いがぷんぷんする。

 

現時点でのAIにも便利な部分はあるが、まだまだ発展途上の技術であるということは意識すべきだと思う。そうでなければ、ある日、とんでもない問題に巻き込まれてしまう可能性があると思う。機械はあくまでも道具であり、重要な部分では、やはり人間の判断が鍵となることは、これからも変わらないだろう。

 

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