先日、「ルポ 若者流出」(朝日新聞「わたしが日本を出た理由」取材班、朝日新書)という本を読んだ。

 

その本の帯には、こう書いてある。

 

<進まない多様性 変わらない教育 しんどい職場 解決策は日本を出ることしかなかった>

 

このことに関して、理解できる部分は大きい。

 

以前、海外で知り合った友人(大学院を卒業している、優秀な人材)から、日本で働くことについて相談を受けたことがある。大切な友人だからこそ、以下のような内容を率直に語った。

 

「生活するには、日本はとても良い所だと思うよ。でも、働くのは基本的に勧められない」

 

日本は島国なので、外国からの情報が入りにくい。そのため、日本人は気付きにくいが、日本の労働環境は、他の先進国と比べると、おかしなことが多い。

 

年功序列の強さ。多くの場合、完全な取得が難しい有給休暇。病気になっても、病気休暇ではなく、有給休暇を使って休む習慣。横行する、長時間の残業(残業代を全て申請することは難しい場合もある)。

 

日本の労働環境のおかしさを理解するために、上記の本から、一つの例を紹介したい。

 

日本の公立小学校で教員として8年間働いた後、カナダに行って保育士として働いている友香さん。

 

日本で働いていた時の環境は、酷かった。上司から週に数回呼び出され、指導と称したパワハラを受けていた。涙を流すと、<「泣いても解決しない。どうにかしろよ」>と責められたらしい。

 

このことについて、年功序列の悪い点が出ていると思う。縦社会の中で、部下が上司に意見することは難しく、ハラスメントが横行しやすい環境だ。もちろん、この上司の資質の問題(責めるのが指導ではなく、助言して、一緒に解決策を考えるのが指導ということが分かっていない)もあると思うが、システムとしても欠点があるだろう。

 

その後、担当していたクラスで学級崩壊が起き、職員会議で窮状を訴えて助けを求めたら、上司から以下のような言葉を受けたという。

 

<「教師として言ってはいけない一言です。担任はあなたなのだから、自分でどうにかしなさい」>

 

その後、教育現場から一時的に外された後(なお、教育委員会から直接事情を聴かれたことは一回もなかったらしい)、再び現場に戻ったが、不信感が募ったという。

 

教員を辞めた後、友香さんはカナダに行った。

 

英語に苦労しながらも、カナダのカレッジで学び(日本の大学でも保育士関連の単位は取っていたが、カナダで保育士の資格を取るために不足している単位があったので、勉強する必要があった)、保育士として働くことになった。

 

日本の学校と、カナダの保育士の職場環境の違いについて、以下のように語っている。

 

<「時給も上がっていますし、残業すると時給が1.5倍になる。日本の教員は仕事量が多いのに残業した分の給料は出ません。今の職場は当然のように定時に帰れるし、残業が10分でも申告します。ボーナスはありませんが、保育士4年目で月給は日本の小学校教諭8年目を上回りました」>

 

この、定時に帰れるということは、海外では珍しくはない。例えば、筆者がイギリスで知り合い、仲良くなった社会人の友人は、日本だったらちょっと早い集合時間の設定でも、遅れずに参加していた。

 

また、上記の本には、以下のような内容がある(読みやすくするために、段落間にスペースを置いた)。

 

 

<日本は失敗に対する風当たりが強く、性別や年齢などに対する固定的な価値観で人をジャッジする社会だと感じている。だから、自己肯定感が低く、命を絶つ若者も後を絶たないとも思う。友香さんは、自身も日本にいたらきっと「価値がない人間」だったと言う。カナダでは性別や年齢も履歴書に書かないのが普通で、みんな年齢や体形にかかわらず好きな服を着ている。

 

「わたしにとって日本は本当の自分を無視して、別の自分を演じないといけない場所。生きていくのは無理なんです」>

 

 

どうだろうか。上記のカナダの件について、海外の先進国における労働環境の一つの例であり、職場によって状況は多少変化するかもしれないが、日本との違いを考えるうえで、参考になると思う。

 

筆者はブログで、旅行ではなく、何らかの形で海外の生活を体験することの重要性について書いてきた。それは、語学力や専門知識の習得だけではなく、日本と海外の違いを知ることも含めている。

 

日本の労働環境の異様さについて知ることで、問題意識が生じ、改善に繋がっていく可能性が出てくる。やはり、世界を知ることは大切だ。人口減が続く日本社会で、人々が安心して働けるように、働く環境を変えていく必要があると思う。

 

(この記事について、当ブログの管理人が運営しているサイトにて、管理人自身が執筆した記事を見直して修正を加えたものです。https://www.tclassroom.jp