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今回の記事は、組織の回復にストレスが及ぼす影響について書きます。

 

ストレス(特に、長期化しているストレス)は、心身に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

ストレスが心身に及ぼす影響について、痛みとの関連で、過去の記事でふれています。今回の記事は、組織の回復への影響について書きます。

 

怪我などで、身体の組織にダメージが発生すると、時間の経過と共に、影響を受けた組織は回復していきます。

 

しかし、ストレスによって、組織の回復が悪影響を受けることが、様々な研究で示されています。

 

例えば、実験的に発生させた損傷(具体例として、体の組織の一部を採取して調べる、いわゆる生検で生じたもの)の回復の速度について、ストレスが少ない状況(あるいは人々)と、ストレスが多い状況で比較するといった研究が行われてきました。

 

短期的な影響の例を挙げると、過去に海外で行われた研究で、参加者(歯学部の学生)に協力していただき、ストレスが少ない時期(夏休み期間)と、ストレスが多い時期(学校における、最初の主要な試験の3日前)に、それぞれ生検を行い(二回目は、体の反対側に実施)、傷の治癒に要した期間を比較した研究があります。

 

その研究によると、ストレスが少ない時期と比べて、ストレスが多い時期の傷は、治癒するまでに3日間、長くかかりました(回復に必要な期間が40%伸びた)。

 

このように、比較的短い期間のストレスであっても、傷の回復に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

それでは、長期的なストレスの影響は、どのようなものなのでしょうか。

 

長期的なストレスによる、組織の回復への影響について、具体例として、以下の研究(「慢性痛及び、関連する問題のマネジメント」や、「スポーツと痛み:アスリートの痛みのマネジメント」の講習会で説明)について書きます。

 

長期間のストレスが組織の回復に及ぼす影響について、アルツハイマー病を有する家族を介護している人々と、年齢等を適合させた対照群を比較した研究があります(強い身体活動の時間等、結果に影響を及ぼすような、健康と関連する行動の違いはグループ間になかったとのこと)。

 

介護者は、平均して約8年間の介護を行っていて、ストレスと関連する質問票の調査により、対照群よりも強いストレスを感じていることが示されています。生検による傷の回復を調べています。

 

傷の治癒に要した期間について、対照群と比べると、介護者のグループは平均で約9日間、長くかかりました。

 

このように、長期的なストレスの影響によって、組織の回復に必要な期間が長くなる可能性があります。

 

痛みについて書くと、ストレスは、痛みの長期化と関連している可能性があります。ストレスが及ぼす影響について、例えば痛みに「敏感」な状態が挙げられますが、組織の回復の遅延も、痛みの長期化と関係があるかもしれません。例えば急性期の痛みを減少させることは痛みの長期化を抑制するうえで有効と考えられていますが、組織の回復が遅れることで、急性痛をより多く感じてしまうことが考えられます。

 

余談ですが、大きな怪我や手術の後は、なるべくストレスの少ない状態で過ごせるように配慮すると良いと思います。そうすることで、順調な回復を促す可能性があります。

 

ストレスによる、回復への悪影響について、特に医療従事者は知っておくと良いと思います。このことについての知識があれば、患者さんの治療について、心理社会的な要素と関連する知識を持つことの重要性が分かると思います。

 

(この記事について、当ブログの管理人が運営しているサイトにて、管理人自身が執筆した記事を見直して修正を加えたものです。https://www.tclassroom.jp