今年行われた大学入学共通テストにおける、英語のリーディングの問題について、前回の記事で書いた。

 

学習の負担の増大について批判をしたが、良い部分についても書かないと、フェアではないと思う。

 

そこで、今回の記事では、共通テストの英語(リーディング)の良い部分についても、書くことにする。

 

まず、共通試験の英語はリーディングとリスニングに分かれているが、リーディングの問題について、発音とアクセント、そして文法の問題がなくなったのは、個人的には良いことだと思っている。

 

当然のことながら、単語の意味や、最低限の文法を理解していないと、文章をきちんと読み取ることができない。そして、アクセントを含めた発音については、分からないときちんと聞き取ることができないので、リスニングの方で間接的にチェックできる。

 

つまり、文法や発音等については、文章の読解や聞き取りに含まれていると言ってよい。テスト時間が限られている中、これらを個別の問題として扱わなくても構わないと思う。

 

次に、合計した文章の量はとても多い(少なくとも、平均的な高校生にとっては)と思うのだが、文中で用いられている単語や文法は、分かりやすいものが多い。

 

ある程度の語彙力があれば、むしろ読みやすい文章だと思う。

 

言い換えると、まるでクイズのような細かい知識を問うのではなく、実務的な能力(例えば、長い文章に素早く目を通し、必要な情報を短時間で探し出す)を問うような構成になっている。

 

そして、最初の部分にある、テストに関する短い説明以外は、日本語が一切出てこない。質問も含めて、全て英語で書かれている。

 

このことは、頭の中を「英語モード」にして、問題を解くために役に立つ。

 

大量の文章を素早く読むこと自体、英語を日本語に訳している時間の余裕があまりないので、英語を英語で理解する能力を促すことに繋がる。そして、テストに日本語がほとんど出てこないというのも、英語で考えることを促すという点では役に立つだろう。

 

このように見ていくと、共通テストのリーディングの問題について、実務的な能力との関連という点では、良問が多いと思う。民間の英語試験と比べても、考え抜かれた、より質の高い内容だと思う。

 

それでは、彼はなぜ、英語のリーディングの問題を批判するのだろうか。

 

それは、高校生の平均的な英語の能力と、共通テストの問題のレベルがかみ合っていないと思うからである。

 

そして、そのことは、中間発表の段階だが、リーディングの平均点が53.3点であることが示していると思う。明らかに、テストの難易度が高い。

 

このことは、以前の記事に書いた、2023年に実施された全国学力テストの結果からも言える。英語の「話す」問題について、1問も正解できなかった生徒の数が、6割を超えたらしい。

 

恐らくは、日本人の若者の英語力を改善するために(ビジネスで英語が使える社会人を増やすために)、学校教育の内容を増やすだけではなく、試験の難易度も上げることで、早くそういう状況を作ろうとしているのではないかと思う。

 

しかし、このやり方だと、生徒にかかる負担が増大する。

 

これは仕事で言えば、上司が無茶な目標を設定して、部下が必死になって努力しているような状況である。こういう状況が、部下にどのような影響を及ぼすのか、いわゆる社会人の経験があれば容易に分かると思う。

 

教育の現状は、急には変えられない。教育の改善のためには、じっくりと取り組むべきである。

 

そして、教育の改善のためには、お金も、人も、必要である。政治は、教育にもっと予算を振り分けるべきだと言いたい。

 

このことは、教育だけの問題ではない。多くの良質な人材を育成することで、社会全体にとっても良い影響が出てくるだろう。目先のことではなく、数十年先の未来を見据えて、教育の改善にじっくりと取り組むことが望ましいと思う。

 

(この記事について、当ブログの管理人が運営しているサイトにて、管理人自身が執筆した記事を見直して修正を加えたものです。https://www.tclassroom.jp