これまでに、医療従事者が英語を勉強することの大切さについて、何度か記事に書いてきた。

 

しかし、医療従事者が英語を勉強する際には、注意すべき点がある。

 

例えば、abductionという単語がある。

 

この単語について、例えば整形外科医や理学療法士などの職種であれば、「外転」(腕を外側に動かす)という意味が即座に浮かぶと思う(学校の授業で専門用語として教えられるので、学生の時に勉強を頑張っていたら、覚えていると思う)。

 

しかし、この単語は通常、「誘拐」や「拉致」といった、恐ろしい意味が主流となる。

 

実際に、英語の辞書を見ても、これらの訳が最初に書かれている。このことは、英和辞典でも、英英辞典でも、変わらない。英語教育の専門家に聞いても、こういう答えが返ってくる。

 

そのため、運動や医学系の知識を持つ人でないと、abductionという単語を耳にしても、「外転」という意味はあまり浮かんではこないだろう。

 

そのため、外国人の患者さんとの会話で、例えば腕を外側に動かしてほしいと伝えるつもりでabductionやabduct(動詞)という単語を使ってしまうと、とんでもない意味になって伝わってしまう場合があると思う。

 

それに、医療系の専門用語、例えば薬の名前についても、注意して勉強する必要がある。

 

例えば、イブプロフェンを例に挙げて説明する。解熱薬や、鎮痛薬として使われる薬である。

 

イブプロフェンについて、英語ではibuprofenと書くが、この単語の発音をカタカナで書くと、「アイビュプロウフェン」という感じになる。先頭の部分について、基本的に「イブ」とは発音せず、「アイビュ」と発音する。

 

そのため、外国人を相手に一生懸命「イブプロフェン」と英語で発音しようとしても、多くの場合、相手に理解してもらえないということになる。

 

薬に限らず、こういう例は多い。例えば、日本における糖尿病の新しい呼称として最近提案された「ダイアべティス」という名称についても、糖尿病(diabetes)の英語の発音はカタカナで書くと「ダイアビーティーズ」に近いので、外国人を相手に「ダイアべティス」と発音しても、相手に伝わりにくい可能性が高い。

 

医療従事者が英語を勉強する場合、一般的な英語に加えて、医療従事者が間違えやすいポイントについても学ぶと効果的である。

 

こうした点から考えると、医療従事者の英語は、英語指導の能力に加えて、医療の知識がある英語教師に教わることがベストだと思う。なぜなら、医療の知識がないと、医療従事者が間違えやすい、上記のようなポイントが分からないからだ。例えば通常の英会話をどこかで習っているような場合でも、それに加えて、英語指導の知識を有する医療従事者の指導を受けることが望ましいと思う。

 

英語が理解できる、医療従事者の数が増えてほしいと思う。外国から来た患者さんとのコミュニケーションの際に役立つだけではなく、文献を読んで知識を得るためにも便利だ。他にも、近年はオンラインで受講できる医療分野の研修が増えているが、海外で提供されているものには英語が多いので、英語ができると選択肢が大きく広がる。

 

新しい情報を含めた多くのことを学び、質の高い医療を提供するためには、英語ができることは重要だと思う。

 

(この記事について、当ブログの管理人が運営しているサイトにて、管理人自身が執筆した記事を見直して修正を加えたものです。https://www.tclassroom.jp