今回の記事は、英語学習について書いてみたい。

 

2023年8月1日の読売新聞に、2023年の4月に実施された全国学力テストの結果についての記事が掲載されている。

 

その記事では、英語について、「話す」技能の平均正答率が、12.4%にとどまったことが紹介されている。特に、五つの問題の中で、「留学生による環境問題の発表を聞き、1分間で自分の意見とその理由を考え、30秒間のうちに英語で答える」という問題は、正答率がわずか4.2%だったという。

 

更に、「話す」について、1問も正解できなかった生徒の数が、6割を超えたという。

 

なお、「書く」についても、平均正答率は24.1%にとどまり、「読む」と「聞く」に比べると、「書く」と「話す」のスコアがかなり低いということが明らかになった。

 

この結果について、問題の難易度のバランス等も考慮する必要があると思う。

 

例えば、「話す」の留学生の発表と関連する問題について、国立教育政策研究所がウエブサイト上で発表している、実際の問題のスクリプトを読んでみたが、使われている単語は比較的簡単とはいえ、日本の中学生にとって英語で答えるのは難しいだろうと思った。

 

しかし、こうしたことを踏まえても、「話す」の正答率が約12%であり、一つも問題が解けなかった受験者の割合が6割を超えたというのは、生徒の英語の能力に偏りがあるという現状を示唆していると思う。

 

このような状況を変えるとしたら、どうすればよいのだろうか。様々なポイントが考えられるが、一つの例について書いてみたい。

 

これは以前から思っていることなのだが、「話す」能力を上げたいのであれば、「話す」以外の英語学習に関する、生徒の負担を減らすべきだと思う。

 

今の英語の授業は、昔よりも、教える内容が増えている。例えば、中学校で学ぶ英単語の数について、昔は1200語程度、今は1600~1800語に増えているという。中学校で教える単語数が、昔と比べると5割近くも増えていることになる。

 

余談だが、高校の授業で教える単語についても、昔は1800語程度、今は1800~2500語程度と増えている(履修科目によって、幅がある)。すなわち、中学校と高校を合わせて考えると、多い場合には、1300語も増えているのだ。このことを決定した大人たちは、学校で英語の授業をもう受けなくて済む人たちであろう。

 

生徒たちは、単語を覚えるだけでも、大変だと思う。それなのに、会話力も上げろと国は言う。「できるか」と文句を言いたくなる子供の数は、多いだろう。

 

実際、前述の新聞には、岩手県内の公立中学校教諭の話として、「教えるべき単語なども増える中、基礎知識の定着に時間がかかり、英語で会話する活動に充てる時間が足りない」というコメントが掲載されている。これは、当然の意見だと思う。

 

会話力の向上を目指すのであれば、例えば授業で紹介する英単語の数はむしろ減らして、その代わりに、重要な単語を、会話も含めて様々な状況で使えるようにすべきだと思う。

 

ただし、英単語や熟語を含めた表現を覚える際には、ただ意味を覚えるだけでは、使いにくい。加えて、記憶にも残りにくい。

 

何かの表現の意味を覚えるだけではなく、それを様々な場面で使えるようにするためには、どうすればよいか。ここで、一つの例を挙げてみたい。

 

例えば、実用的なテーマとして、手洗いと関連する表現を覚えると仮定する。

 

手を洗うことについて、まず、どのような表現があるのか、教師が生徒に質問をする。単語や熟語などを含めた表現の例が、生徒から示される。それを、教師は黒板に書いていく(このやり取りは、英語で行えばベストだが、難しければ日本語でも構わない)。この時、教師からも、役に立つ表現などを紹介する。

 

その後、生徒はペアになり、黒板に書いてある表現を参考にしながら、手洗いについて、簡単なやり取り(例えば、「あなたは手をよく洗う?」「うん、洗っているよ」くらいの内容でも構わない)を英語で行う。

 

ここまでは、手洗いと関連する内容について、「聞く」と「話す」の練習を行うことができる。

 

次に、手洗いの必要性について書かれた、英文の記事が教師から配られる。それぞれの生徒は、個別にこの記事を読む。この段階では、手洗いと関連する内容について、「読む」練習ができる。

 

次に、宿題として、手洗いを推奨する英文のポスターを作り、次の授業の際に提出する(これは、ペアやグループでも構わないが、あまり大勢では行わない)。習字のように、教室の後ろに張り出して、どれが優れているのか、投票をしても良い。この段階では、手洗いと関連する内容について、「書く」練習ができる。

 

このように、手洗いと関連する内容に様々な形で接することで、「聞く」、「話す」、「読む」、「書く」を並行して向上させることができる。更に、繰り返して同じテーマの表現に接することになるので、記憶に残りやすい。

 

これは一つの例だが、いずれにしても、現在の学校教育に、改善の余地はたくさんあると思う。生徒たちが、のびのびと英語を学び、実力を伸ばしていけるように、工夫をすべきだと思う。

 

(この記事について、当ブログの管理人が運営しているサイトにて、管理人自身が執筆した記事を見直して修正を加えたものです。https://www.tclassroom.jp