突然だが、彼は外でメダカを飼育している。
メダカは、睡蓮鉢の中で生活している。水草を植えていることから、光合成によって酸素は供給されているので(他にも、水面を風が吹けば、空気が水に「溶ける」という)、空気を出す装置のような物は付けていない。
餌をくれること、それから週に1回程度、7割くらいの水を入れ替えること、時々鉢の底の掃除をすること以外は、ほとんど何もしていなくても、メダカたちはすくすくと育っている。次々と子供が生まれるので、最初にメダカを購入して以降、新しいメダカは購入していない。
暑い時期、水の中を優雅に泳ぐメダカを見ていると、リラックスできる。彼にとって、ある種の清涼剤のような存在になっている。
メダカがいる鉢を眺めていると、暑さが厳しさを増してから、睡蓮鉢の水を飲みに、ハチが時々訪れていることに気づいた。水草の上にふわっと降り、ごくごくと水を飲んでから、どこかに飛び去っていく。
ハチは、アシナガバチと、スズメバチを見かける。
こう書くと、えっ怖いと感じる人がいるかもしれない。しかし、彼が傍で何かをしていても、ハチたちは無関心だ。
子供の頃の経験(彼は自然が好きで、動植物がいるところでよく遊んだ)から、ハチは一般的に考えられているほど、怖い存在ではないと感じている。
ハチが人間を攻撃するとしたら、多くの場合、人間がハチに攻撃的な行動をした時、あるいは自分の巣が攻撃されるかもしれないとハチが感じた時だと思う。
これは、言い換えると、自分の身を守るため、そして自分の家族を守るために、そうした行動をするということになる。
こう考えると、ハチも人間も同じだということが、良く理解できる。緊急時に、やむを得ず、そういう行動をするのであって、手当たり次第に周囲に攻撃をしている訳ではない。
また、実はアシナガバチやスズメバチも、自然環境を維持するために貢献している。そして、毛虫を食べてくれるので、庭の植物を守るために役に立つ。
ドアの近くなど、人がよく通るところに巣が作られた時には対処が必要になると思うが、そういうことがなければ、静かに見守ってあげればよいと思う。
ハチが来ていることに気づくと、彼は睡蓮鉢の近くで、じっと動かず、その様子を観察することが多い。ハチも、その方が安心して水を飲むことができる。
ハチだって、この猛烈な暑さの中で、生きている。餌を集めたり、巣を作るための材料を集めたりする間に、水分補給が必要になるのである。
水を飲んでから、空に向かって飛び立つハチを眺めていると、彼は心が安らぐ。人間も、昆虫も、同じだということが分かり、生物としての繋がりを感じる。必要があれば、また、水を飲みに来ていいよと、彼は心の中で呟いている。
(この記事について、当ブログの管理人が運営しているサイトにて、管理人自身が執筆した記事を見直して修正を加えたものです。https://www.tclassroom.jp)