皆さん、こんにちは。いつもブログの記事をお読みいただき、ありがとうございます。

 

今回は、最近よく書いているテーマとは異なる内容について書きます。

 

痛み関連の記事を最近は少し書いてきましたが、思ったよりも好評をいただいています。そこで、今回も、痛みに関する内容について、書いてみます。

 

これまでに何度か書いてきましたが、睡眠は痛みと関係があります。

 

このように書くと、「痛みがあって、眠れなくなったりするんでしょう?」という意見が出てくると思います。痛みが睡眠に影響を及ぼす、<痛み→睡眠>の関係です。

 

もちろん、このような関係もあります。しかしその一方で、睡眠が痛みに影響を及ぼすことも、痛み関連の研究で分かってきました。すなわち、<睡眠→痛み>の関係です。

 

それでは、睡眠がどのように、痛みへ影響を及ぼすのでしょうか。

 

例えば、有名な医学雑誌に掲載された、IOC(国際オリンピック委員会)による、アスリートの痛みのマネジメントの声明があります。そこには、睡眠の質の低下や睡眠時間の不足により、健康な人の場合には痛みの閾値を下げる(通常と比べると、弱い刺激で痛みを感じると考えてください)、患者さんの場合には痛みのレベルが増加することが記載されています(「スポーツと痛み:アスリートの痛みのマネジメント」の講習会で説明しています)。

 

これは、分かりやすく言うと、<痛みに敏感になる>という一言で説明しても良いと思います。

 

このような変化が、例えばよく眠れなかったり、睡眠時間の不足だったりという理由で生じる可能性があることが、様々な研究で明らかになってきました。

 

痛みに悩んでいる患者さんだけではなく、痛みに苦しめられていない人にも、このような変化が現れることは興味深いです。睡眠の問題が、痛みのある人の悩みが更に増える原因となる可能性があるだけではなく、痛みに苦しむ状況への入り口の一つになっている可能性もあると思います。

 

痛みの現代的な概念では、睡眠の問題と痛みはお互いに影響を及ぼし合っていることが知られています。つまり、<睡眠⇔痛み>です。

 

痛み治療に関する過去の概念に基づくと、痛みを改善すれば、それに沿って、睡眠の問題も改善すると考えることが多かったと思います。しかし、痛みの現代的な概念では、痛み治療の一環として、睡眠の問題にも評価(アセスメント)を行い、問題があればアプローチを行うべきと考えます。

 

実際、痛み関連の近年のガイドラインや声明では、睡眠の問題への言及をよく見かけます。

 

また、痛みへのアプローチに役立たせるためには、様々な職種がこの問題についての関心を深めることが大切です。

 

例えば肩こりに悩む人がいて、理学療法士がそういう方をみると、姿勢や筋の硬さ等を調べるかもしれません。それも一つの方法ですが、もしかしたら、その方には睡眠の問題があり、症状に影響を及ぼしているのかもしれません。睡眠はもちろんのこと、痛みに影響を及ぼす可能性のある多様な要素についての知識があれば、様々な可能性に気づくことができます。

 

痛み関連の研究を数多く行っているNijsを含めた専門家たちは、理学療法系の論文の中で、理学療法士が不眠と慢性痛との関係について学ぶことの重要性について説明しています(「痛みの理学療法」の講習会で一部説明しています)。このように、様々な職種が、幅広い知識を身に着けることは大切です。

 

痛みは、様々な要素から影響を受けます。今回は睡眠の問題との関係について書きましたが、他にも多様な要素と関連しています。そうした要素について学ぶことで、痛みに対してより有効なアプローチを行うことができるようになります。

 

以前の記事にも書きましたが、痛みに苦しんでいる人の数は多いです。痛みに詳しい医療従事者の数が増えることを期待しています。

 

(この記事について、当ブログの管理人が運営しているサイトにて、管理人自身が執筆した記事を見直して修正を加えたものです。https://www.tclassroom.jp