前回の記事に続いて、ロンドンの福島庭園(Fukushima Garden)と、東日本大震災の思い出について書く。
震災が起こった当日、彼は関東地方で病院の職員として勤務していた。理学療法士として、担当していた方のリハビリを実施していた最中だった。
突然、大きな音と揺れが起こり、あの日から世界は一変した。
カップラーメンなどの保存しやすい食品がスーパーなどの棚から姿を消して、車の給油をするために長蛇の列に並んだ。今後の見通しが立たなかったことがもっとも辛く、不安な日々を過ごしていたことを今でも覚えている。
ここ数年も新型コロナウイルスの流行で大変な状況だったが、あの頃の方が、もっと、ずっと、大変だった。
震災が起こる前に、彼はイギリスへの短期の旅行を予定していた。オーストラリアでの勉強を経験した後のことであり、英語にはそれなりに慣れていたので、旅行を楽しみにしていた。しかし、あの震災が起こったことで、旅行に行けるのかどうか分からなくなった。
その後、震災から数か月が経ち、社会も自粛の雰囲気から、経済を回そうという雰囲気に変わっていた。バスも飛行機も動いていて、社会情勢も少しずつ落ち着きを取り戻してきた。職場の方も、彼が旅行のために予定通り休暇を取得しても問題がなさそうだった。
それでも彼は迷っていたが、せっかくの機会であり、やはり行くことにした。
しかし、震災の後に国外への旅行をするにあたり、彼には不安な気持ちがあった。
原発事故については、世界中で報道されていた。その日本からの来訪者ということで、嫌がられたりはしないだろうか。また、日本はどのように見られているのだろうか。このような不安を抱えながら、彼は機上の人となった。
この時、ロンドンについてから、当時はまだあったロンドン三越の近くの日本関連のお店に行き、そこで彼はある光景を見て、驚いた。
多くのお客さんが、お店に来て、商品を購入してくれていたのである。
彼はその光景を見て、思わず涙が出そうになった。あれほどの震災が起こった後でも、変わらずに日本の商品を購入してくれている。イギリスの人々は、日本を支援してくれている。お店を訪れているお客さんに、心の中で、深く感謝したことを覚えている。
思えば、後にイギリスの大学院に進学することを決めた時、この時の印象も影響していたと思う。まだこの時点では、イギリスに友人はいなかったが、それでも良い印象を持っていた。
そして、実際に留学をして、多くの素晴らしい経験をすることができた。
福島庭園の中を歩きながら、彼は震災の後の復興への努力に思いを馳せた。関東に住んでいる彼にとっても震災は大きな出来事だったが、福島県を中心とした東北地方の方々はもっと大変だと思う。特に、居住地から離れて住むことを余儀なくされている人々の悲しみを思うと、やり切れない。
あの当時、苦しみの最中にあった日本を支援してくれたイギリスの人々には、厚く感謝をしたい。そして、今後も福島庭園が、日本からの感謝を示す場所として、ここにあってほしいと思う。
(この記事について、当ブログの管理人が運営しているサイトにて、管理人自身が執筆した記事を見直して修正を加えたものです。https://www.tclassroom.jp)