彼はデザイン・ミュージアムの次に、ホーランド・パーク(Holland Park)を訪れることにした。
道路沿いには、いかにもイギリスらしい雰囲気を感じさせる装飾が施された門があった。
黒色と金色をモチーフにしたデザインは素晴らしい。この二色の組み合わせは、ジョン・エヴァレット・ミレー(以下、敬称略)などの絵画にも使われている。高貴な雰囲気を感じさせる。
ただし、この門は主に観賞用と思われる。この門の近くには、通常の出入り口があるので、彼はそちらの方を通って、公園内に入ることにした。
北に向かって細長く続いている道を進むと、芝生に覆われた広いスペースに出た。運動場のように見えたが、普段どのように用いられているのかは分からない。
公園はよく整備されていて、植物がたくさんあった。他の公園と似ている部分もあるが、それでも固有の雰囲気を持つ場所だった。
敷地内を歩いていると、クリスマスローズが群生している場所を見つけた。
彼はクリスマスローズが好きだ。日本の実家にも、たくさんのクリスマスローズが庭で育っている。この花の品種改良はイギリスで盛んに行われたようなので、この国で見ることができて嬉しかった。
周囲を眺めると、クリスマスローズは落葉樹の下で育っていることが分かった。これは、この花にとって好ましい状況だと思われる。
クリスマスローズは半日蔭くらいの状況でよく育つとされているので、まだ日光がそれほど強くない時期には光をたくさん浴びて、落葉樹の葉が成長してくる時期(光が強い)には木漏れ日の環境で過ごすことができる。生育に適した場所であると思った。
余談だが、イギリスの庭園を歩いていると、ガーデニングの参考になることが多く、勉強になる。
彼はヨーロッパ大陸の庭園でよく見られる、人間が手を加えて木の形を大胆に変える方法(例えば丸や三角、四角のように、自然ではありえない形にすること)はあまり好きではない。イギリスの庭園のように、人間があまり手を加えない、自然に近い状態の庭園が好きなので、歩いていると楽しくなる。
それと、三月の時期なので、水仙の花も咲いていた。
水仙の花はあちこちに咲いているが、ハイド・パークとリージェンツ・パークに咲いている花が好きだ。特に後者の公園では、水仙が大量に群生している姿を見ることができる。
彼がイギリスの大学院の院生として勉強していた頃、早春にはたくさんの水仙の花があちこちで咲き乱れていた。公園はもちろんのこと、道路沿いの地面のような場所にも咲いていた。まだ寒さが残る時期に、気分を明るくしてくれる黄色の花を見て、リラックスしていたことを思い出す。
三月はまだ寒く、一般的には旅行のための最適な時期とは言いにくいかもしれないが、それでも彼はイギリスで水仙を再び見ることができて嬉しかった。
(この記事について、当ブログの管理人が運営しているサイトにて、管理人自身が執筆した記事を見直して修正を加えたものです。https://www.tclassroom.jp)