学術大会の初日の夜、夕飯を食べた後に彼はホテルの部屋に戻り、シャワーを浴びて、少し本を読んでから、ベッドの中に入った。清潔で快適な環境の中、疲れた体を癒すことができた。

 

翌朝、以前の記事にも書いたホテル内の会場で朝食を済ませてから、出かける支度を整えた。

 

早朝のウィーンの静かな街中を、会場に向かって歩いていった。前日は道に迷わないように地図を頻繁に確認しながら歩いていたので、周囲の景色にあまり注意は向かなかったが(遊園地は別)、この日は道沿いの風景を楽しみながら移動した。

 

すると、会場に行くまでの道のりで、可愛らしい建物を見つけた。パステルカラーのイエローを中心とした建物である。落ち着いた色味で統一されているので、派手過ぎず、周囲の景色にも違和感なく溶け込んでいるように見えた。レンガ造りの壁の部分もあり、いかにもヨーロッパという雰囲気の建物である。設計者のセンスの良さを感じさせた。

 

 

この建物を見ながら、彼はロンドンのポートベローのマーケットを思い出した。映画「ノッティング・ヒルの恋人」で有名になったノッティング・ヒルのポートベロー・ロード沿いで開催されるマーケットのことだが、このマーケットがあるエリアにはカラフルな建物がたくさんある。彼は以前、イギリスで出会った友人がこの場所に行ってみたいと言っていたので、一緒にマーケットを訪れてみたことがある。

 

友人は大喜びでアンティークの小物などを眺めていたが、どちらかというとマーケットの商品よりも周囲の建物の方が彼にとっては印象に残っている。今振り返ると、色が違っていても、色調が似ているので、統一感があったのだと思う。たくさんの可愛らしい建物を眺めながら、友人と一緒にマーケットをのんびりと歩いて、楽しい時間を過ごすことができたことを覚えている。

 

ウィーンで見た、この建物からも同じような雰囲気を感じた。懐かしさを感じて、嬉しかった。

 

ヨーロッパの建物について、素材の色を生かした建物も良いと思う。しかし、この建物のように、何らかの色を塗った建物も素晴らしい。まるで童話の世界のような、美しい建物を眺めながら、彼は会場に向かって再び歩を進めた。

 

(この記事について、当ブログの管理人が運営しているサイトにて、管理人自身が執筆した記事を見直して修正を加えたものです。https://www.tclassroom.jp