その日の朝、彼はいつも通りに目覚めた。比較的、よく眠れたと思う。ベッドから起きて、背伸びをした。その日の朝は快晴だった。

 

その日は修士論文の提出日だった。当日の朝までに他の準備は済ませていたので、後は関連する書類を持参するだけだ。長かったが、とうとうこの日を迎えることができた。本当に感慨深かった。

 

朝食を食べた後、寮を出て、売店に立ち寄ってから、彼は大学の建物に向かった。はっきりとは覚えていないが、朝の比較的早い時間だったような気がする。書類を時間ギリギリに持っていくような危ないことは避けたかった。

 

これまでに何度も来た、建物に入った。彼は論文を提出した。これまでに長い時間をかけてきた論文が、彼の手元を離れた。寂しいような、ほっとするような、あっけないような、複雑な感情だった。しかし、何かをやり遂げたという感触はその手にしっかりと残っていた。

 

彼は建物を出て、寮に戻ることにした。見上げると、よく晴れた青空が見えた。その空の色は、その時の彼の晴れやかな心を表しているようにも思えた。

 

彼は寮の部屋に戻り、着替えることなく、そのまま仰向けにベッドに倒れこんだ。脱力感があった。放心状態だった。その日は歩いて帰ってきただけなのに、これ以上は動けない、そんな感覚だった。

 

部屋の天井を見ながら、彼はこれまでの時間に思いをはせた。

 

オーストラリアでの充実した勉強の後、海外で更に学ぶことを決意して、イギリスに来て、何とか頑張ってきた。深夜または朝方まで勉強して、大変だったが、良き友人がたくさんできたおかげで、本当に楽しい時間を過ごすことができた。やり切ったと思う。頑張ったと思う。努力を積み重ねてきたことについては、胸を張ることができると思った。

 

彼はベッドの上で、自分自身を褒めてあげた。そして、そのまま放心状態でベッドに横たわっていた。これで今夜はぐっすりと眠れる。達成感と安心感。二つの思いを抱きながら、彼はこれまでの努力を振り返っていた。

 

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