以前中華料理店で食事を一緒にした、フランスから来た友人はその後も頻繁に声をかけてくれた。彼は勉強で忙しかったので、全ての誘いに応じることはできなかったが、それでも参加できそうな時には応じることにしていた。

 

その友人は料理が得意である。集まりの時には、いくつかの料理をよく作ってくれたのだが、思い出深い料理が一つある。友人は、その料理のことをラクレットと呼んでいた。

 

料理そのものは至ってシンプルで、小さなジャガイモに薄いチーズを乗せている。それをホットプレート(料理を作る時、その友人は自分のホットプレートを持参した)の上で焼く。チーズがとろりとして、ジャガイモと一体になる。他にも何かを加えていたのかもしれないが、彼が思い出せるのはこういう特徴である。つまり、非常にシンプルな料理だ。それなのに、本当に美味しいのである。

 

彼はいつも、その友人が作ってくれるラクレットを楽しみにしていた。友人はラクレットを作る時、スーパーで念入りにチーズとジャガイモを選んでいたことから、作り方はシンプルであっても、材料がカギとなるのかもしれない。彼だけでなく、他の人たちも皆がその料理を楽しんでいた。

 

ラクレットは、彼がその友人と一緒に過ごした楽しい時間を思い出させてくれる料理である。彼の母国でも食べたいと思うのだが、それは恐らく難しいだろう。もっとも、大都市でフレンチレストランを探せば、「ラクレット」というメニュー自体はあるのかもしれない。しかし、それは彼が知っているラクレットではない。彼が知っているラクレットは、外食用の料理ではなく、フランスの家庭料理で、彼の友人が作ってくれる料理なのだ。彼にとっての思い出のラクレットをいつか再び食べたいと思う。

 

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