25日から「脳卒中週間」。脳梗塞や脳出血を起こすリスクがある、生まれつきの血管異常が「もやもや病」だ。原因不明で徐々に状態が悪化していくので難病指定されている。世界の中でも特に日本人に多いので注意しておこう。
【煙のように拡張】
脳の動脈は、左右の内頸(ないけい)動脈と左右の椎骨(ついこつ)動脈の4本あり、お互いが脳底部でつながり輪(ウィリス動脈輪)になっている。これは1本の動脈が詰まっても、他の動脈から血液が流れ込む安全装置になっている。
もやもや病は、左右の内頸動脈が狭くなったり、閉塞(へいそく)して脳血流が不足する病気だ。慶應義塾大学病院・神経内科の鈴木則宏教授が説明する。
「脳血流の低下で、ウィリス動脈輪の近くの細い毛細血管が多数拡張する。脳血管撮影の画像で見ると、毛細血管がモヤモヤと煙が立ち上るように見えるのが特徴です」
日本人医師が発見したことから、この病名が付けられ、別名「ウィリス動脈輪閉塞症」ともいう。
【息を吹くと症状出る】
原因はまだ不明だが、欧米に比べてアジア系民族は10倍多く、日本人の発症(年間約400人)が最も多い。発症年齢には、5歳前後の小児と30~40代の成人の2つのピークがある。
「内頸動脈や毛細血管が詰まれば脳梗塞、破れれば脳出血として症状が現れます。また、血管の収縮・拡張が通常の人と違って、過呼吸状態で血管が収縮する。で
すから、笛など吹奏楽器を吹いたり、熱いラーメンをフーフーと息を吹いて冷ましたりすると、一時的に手足の脱力や言語障害、意識障害などが起きて数分で治まる症状(一過性脳虚血発作)が出る人もいます」
多くはないが、起床時から午前中に吐き気を伴う強い頭痛が起きて、午後には改善する症状が現れる人もいるという。
【予防は薬か手術】
脳梗塞や脳出血に対しては程度に合わせて、薬物療法や手術が行われるが、原因不明のもやもや病自体を根本的に治す治療法はない。
「血管が詰まって血流が低下する脳虚血型には、抗血小板薬の内服や脳血管のバイパスをつくる手術が行われています。出血型では、降圧薬による血圧管理。
バイパス手術を行う場合もありますが、はっきりした有効性は分かっていません」
もやもや病による症状の再発予防を薬と手術のどちらでやるかは、脳血流量の分布を調べるスペクトなどの検査によって判断されるという。
「症状がなくても、脳ドックなどでもやもや病が見つかったら、神経内科や脳外科で治療が必要か、きちんと評価してもらうことが大切です」
《もやもや病の症状》
【脳虚血型】(小児に多い)
・過呼吸で一時的に手足の脱力や意識障害が起こる
・脳梗塞(片まひ、言語や視野の障害などが続く)
【出血型】(成人に多い)
・脳出血(激しい頭痛、嘔吐、意識障害など)
【頭痛型】(少数)
・午前中に嘔吐を伴う頭痛が起こり、午後には改善
【てんかん型】(まれ)
・けいれん発作が起こる