筋トレでは体脂肪が減らず、有酸素運動も効果薄!? 「脂肪が落ちる」と「シェイプアップ」の違い
ちまたには多くのダイエット方法があふれています。これまで何度もダイエットに挑戦しては失敗を繰り返してきた方も多いのではないでしょうか?
「痩せない要件」を排除して「痩せる要件」のみを採用すれば、合理的な方法でダイエットを成功させられるかも。
本稿で紹介するのは、『ロジカルダイエット 3か月で「勝手に痩せる体」になる』の著者で、ダイエット指導歴35年以上の健康運動指導士・清水忍氏による、「運動」と「食事」の新常識。「痩せた体」「もう太らない体」の土台を作り上げませんか?
※本記事は清水忍著の書籍『ロジカルダイエット 3か月で「勝手に痩せる体」になる』(幻冬舎)から一部抜粋・編集しました。
02_pixta_32418819_M.jpg© 毎日が発見ネット 提供
※写真はイメージです(画像提供:ピクスタ)
脂肪がたまるメカニズムとは
さて、合理的に効率よくダイエットを進めていくには、体脂肪というターゲットがどんな相手なのかを知っておかなくてはなりません。
「なぜ」を追求するロジカルダイエットでは、ターゲットである体脂肪の特徴を知り、「なぜ、体に脂肪がついたり落ちたりするのか」を分かっていることがとても重要なのです。
そこで、「脂肪がたまるメカニズム/脂肪が減るメカニズム」をここで簡単に整理しておくことにしましょう。
そもそも、人間には、万が一食べられなくなったときのための備蓄エネルギーが必要です。体内に蓄えられるエネルギーは「糖質」か「脂肪」のどちらかなのですが、もともと糖質はほんのちょっとしか蓄えられません。
糖質はグリコーゲンというかたちで肝臓や筋肉にストックされるものの、わずか400gほどしか蓄えられず、ちょっと運動でもすればすぐになくなってしまいます。
方、脂肪は貯蔵に向いたエネルギーです。糖質1gが4kcalなのに対し脂肪は1gで9kcalもあり、大容量のエネルギーを出すことができるうえ、コンパクトに収納できていくらでも蓄えることができます。
そのため、人の体はちょっとでも余剰エネルギーがあれば、どんどん脂肪に変換して体内にストックしようとします。
すなわち、体内にグリコーゲンとしてためられる容量を超えた糖質が入ってくると、それらをどんどん脂肪に変換して貯蔵しようというメカニズムが働くわけです。
つまり、ごはん、パン、麺類、お菓子、果物、ジュースなどの糖質を普段からたくさん摂っていると、それらがどんどん脂肪に変換されてエネルギー貯蔵庫へ回されていくことになるのです。
このエネルギー貯蔵庫は体中いたるところにあり、肝臓の細胞にたまれば脂肪肝が進み、内臓の周りにたまれば内臓脂肪が増加し、おなかや太もも、お尻などの皮下にたまれば皮下脂肪となっていきます。
そして、こうした脂肪が増えてくると、脂肪をためこむ細胞のひとつひとつが、まるで水風船がふくらむように膨張していくのです。こうした脂肪細胞の膨張こそが肥満の正体だと言っていいでしょう。
ですから、「なぜ、脂肪がたまるのか」をひと言で言ってしまえば「エネルギーの摂りすぎ」ということになります。
私たち人間が太古の昔から飢えや寒さをしのいで過酷な環境を生き延びてこられたのは、この脂肪を蓄積するエネルギー貯蔵システムがあったおかげだと言っても過言ではありません。
しかし、飽食の現代においては、この優れたエネルギー貯蔵システムがあったことが裏目に出て、健康面や美容面でさまざまな問題を引き起こしているということになります。
筋トレではやせない、有酸素運動も期待するほど効果はない
次に、脂肪が減るメカニズムのほうを説明しましょう。体脂肪を減らすには、体内のエネルギー貯蔵庫からどんどん脂肪を追い出さなくてはなりません。その追い出し作業を効率よく進めるにはどうしたらいいのかという話です。
倉庫にストックされた脂肪を減らしていくには、まず、食事をコントロールしなくてはなりません。
これ以上倉庫にエネルギーがたまらないようにするのはもちろんですが、摂取カロリーを少なくして、倉庫内のエネルギーが次々に使用されて出ていく状況をつくっていかなくてはならないわけです。
摂取カロリーを少なくするだけでなく、消費カロリーを多くすることも大切です。おそらく、消費カロリーを増やすと聞いて、みなさんがまっ先に思い浮かべるのは、筋トレやウォーキング、ジョギングなどの運動でしょう。
これが「筋トレで腹筋を鍛えたところでおなかの脂肪は減らない」といういちばんの証拠なのではないでしょうか。
もっとも、みなさんご存じのように、筋トレをしっかり行なえば、筋肉は太く盛り上がってきます。すると、体のたるんでいた部分やだぶついていた部分が引っ張られて、全体に引き締まった感じに見えてくるようになります。これを「シェイプアップ」と呼んでもいいでしょう。
つまり、筋トレには脂肪を減らす効果はないものの、脂肪のたるみを目立たなくさせる効果はあるのです。
だから、腹筋トレを毎日一生懸命やっていれば、脂肪は減らなくともおなかが引き締まって見えてくる場合もあります。もともとそんなにたくさんの脂肪をおなかに蓄えていない人であれば、他人から「あれ? やせた?」と錯覚されるかもしれません。
ただ、こういった「シェイプアップ効果」「引き締まったように見える効果」は、正確には「やせた」とは言えません。
「やせた」と言えるのは、あくまで体脂肪が減った状態です。「脂肪が落ちてやせた」と「筋肉が発達した」は、生理学的にもまったく違う別々の現象であり、両者を混同することはできないのです。
すなわち、筋トレでどんなにすっきりシェイプアップされたとしても、脂肪が減っていない限り、「やせた」の仲間には入れられないということになります。
清水忍
トレーニングジムIPFヘッドトレーナー。アメリカスポーツ医学会認定運動生理学士(ACSM/EP)、健康運動指導士。一九六七年、群馬県生まれ。大手フィットネスクラブ勤務後、スポーツトレーナー養成学校講師を経て独立。「なぜ」を追求するロジカルな指導で、メジャーリーガー・菊池雄星投手らプロアスリートのパーソナルトレーナーとして絶大な人気を誇る。ダイエット指導歴三十五年以上。NESTA JAPANエリアマネージャー、菊池投手考案の野球複合型施設「King of the Hill」アドバイザー。「Tarzan」監修