回数の多い、満足のいく性的活動は高齢男性に心血管系疾患のリスクをもたらすが、高齢女性はオーガズムを感じる性行為を定期的に行うことで特定の健康上の問題を実際に予防できる可能性があるとの研究結果が6日、発表された。
大規模調査に基づく今回の研究論文の主執筆者で、米ミシガン州立大学(Michigan State University)のフイ・リュウ(Hui Liu)准教授(社会学)は「これは、性交渉がすべての人に同一の健康上の恩恵をもたらすという、広く支持されている仮説に異を唱える結果だ」と語った。
研究チームは、連邦政府資金による全米調査プロジェクトの対象者で47~85歳の2204人の調査データを分析。研究成果を米専門誌「保健・社会行動ジャーナル(Journal of Health and Social Behavior)」に発表した。
研究チームによると、女性の調査対象者で「性交渉が極めて気持ちの良い、満足感が得られるものだと分かった」人々は、性交渉での満足感が少ない人々に比べて、高血圧症になる確率が低かったという。
リュウ准教授は「これについては男性より女性によくあてはまる可能性がある」と説明する。「なぜなら、男性はパートナーとの関係の質に関係なくパートナーから助けを受けられる可能性が女性より高いが、女性の場合、そのような恩恵をパートナーから得られる可能性があるのは良質の関係にある場合に限られるからだ」
また、オーガズムの間に分泌される女性の性ホルモンも女性の健康に恩恵をもたらす可能性があるとリュウ准教授は指摘した。
その一方で、性交渉を週1回以上行っている男性は、心血管系疾患のリスクが通常より高かった。
リュウ准教授は「特筆すべきことに、性交渉を週1回以上行うことで、性的に不活発な高齢男性の2倍近い心血管系疾患リスクが高齢男性にもたらされることが明らかになった」と話す。「さらに、パートナーと極めて気持ちの良い、満足感が得られる性交渉をしていたという高齢男性は、そうではない男性よりも心血管系疾患リスクが高かった」
高齢男性は「体力が衰えて性の問題に悩まされることが多くなる」ため、性交渉とパートナーとの関係による精神的な緊張と圧力が心臓の健康リスク上昇の原因となっている可能性がある」とリュウ准教授は述べた。
「高齢男性は、医学的および情緒的な理由から、オーガズムに達する困難が若い男性よりも大きいため、絶頂に達するために頑張りすぎて疲労の度合いがより高くなる上に、心臓血管系に加わるストレスがより高くなる可能性がある」と、リュウ准教授は説明した。
また、男性ホルモンの一種であるテストステロンの濃度と、性欲を向上させる薬の使用が、男性の心臓血管の健康に悪影響を及ぼす可能性があると、リュウ准教授は指摘している。
論文の執筆者らは、高血圧、頻脈(心拍数が異常に多い状態)、高レベルのC反応性タンパクや、心臓発作、心不全、脳卒中などの心血管系イベントの発生などを基準として、心血管系疾患リスクを評価した。