薬は食前・食間・食後のタイミングに服用するものがほとんどだ。薬と食事は切っても切れない関係だが、一緒に食べる食品によっては薬効が弱まるばかりか、逆に「毒」に成り変わるリスクもある。
栄養価の高い食品としてスポーツ選手のエネルギー補給にも用いられるバナナだが、潰瘍性大腸炎など免疫疾患の治療薬を服用している人が食べすぎるとリスクにつながる。
薬の働きで腎機能が低下しやすくなっているため、バナナに豊富に含まれるカリウムの排泄が進みにくくなるからだ。薬剤師の堀美智子氏によると「場合によって不整脈などの原因になる」という。
高血圧治療薬、いわゆる降圧剤を服用している人が気をつけなければならないのも、カリウムを多く含む食品だ。
「高血圧治療薬の中でも、カリウム保持性利尿薬と呼ばれるタイプは、血圧を下げる働きを持つカリウムを体内に保持する機能があります。カリウムが豊富に含まれる赤ワインを好んで飲む人は要注意です。高カリウム状態になって倒れ、救急車で運ばれた事例もあります。
一方、ACE阻害薬やARBといったタイプの高血圧治療薬を服用する人も同様に、カリウムが多く含まれている食品に注意してほしい。また、高血圧治療をしている人は、漢方薬や甘味料に使われる甘草の過剰摂取にも注意が必要です。摂取しすぎてしまうと血圧を上げてしまいます」(同前)
高血圧患者に限らず、酒と薬の組み合わせは基本的に避けるべきだ。アルコールが胃粘膜を傷つけ、飲みすぎれば中枢神経の働きが抑制され記憶障害が起きる可能性もある。
「睡眠薬や催眠鎮静成分を含む風邪薬を飲むとその作用が強くなるので、薬を飲む日は飲酒を避けるべきです」(同前)
脂質異常症治療薬(プロブコール)の添付文書には「高脂肪食」と一緒に摂取することに注意すべきとある。この薬を投与しているアカゲザルに高脂質・高コレステロール食を摂らせたところ、死亡する実験結果が出たという。薬の効果を過信して食生活管理を疎かにすべきではないということが示唆されている。
日常飲む薬も危険なものに変えてしまう「飲み合わせ」。その情報をよく知ることが、リスクを遠ざける何よりの近道になる。