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空腹時の“炭水化物ドカ食い”は幸せだけど…話題の「血糖値スパイク」がもたらす“怖いリスク”<医師監修>

空腹時にかきこむ炭水化物は格別だ。全身をカロリーが埋め尽くし、腹と脳を多幸感で一杯にしてくれる。昨今SNSで話題になったマンガ『ドカ食いダイスキ! もちづきさん』(白泉社)では、ドカ食いで幸せのあまり酩酊することを「至る」と表現した。

 

フィクションであれば楽しめる。ただ、これを現実で頻繁に行ってしまうと糖尿病や心筋梗塞などの重大な病気を引き起こす可能性があるそうだ。そのキーワードとなるのが「血糖値スパイク」という言葉だ。

 

今回はそんな血糖値スパイクの症状と原因、予防法について、無類のドカ食い好きである筆者が取材を敢行。銀座泰江内科クリニック院長の泰江慎太郎さんに話を聞いた。

 

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画像はイメージです© 日刊SPA!

 

◆いつの間にか糖尿病…血糖値スパイクの恐ろしさ

 

血糖値スパイクとは、別名『食後高血糖』とも呼ばれる。血糖値の上がり下がりをグラフで表す際、その波形が鋭く尖っていることから「スパイク(Spike)」と名付けられた。

 

食後の血糖値は、すい臓から分泌されるインスリンと呼ばれるホルモンによって、血糖値を適切に維持するよう調節される。

 

しかし、肥満や加齢、生活習慣の乱れで すい臓機能が低下すると、食後の血糖上昇に伴うインスリンの分泌がワンテンポ遅れることとなる。その結果、血糖値が上がりきった後にやっとインスリンが分泌されてしまい、血糖値が急激に低下する現象が起こる。これが血糖値スパイクである。

 

通常、食後の血糖値は70〜140mg/dlの範囲で上下するが、血糖値スパイクの場合、これが200〜300まで跳ね上がる。上がりきった血糖値はそのあと急降下するが、その際にめまい・眠気・だるさなどを引き起こす。

 

ただ、これらは軽度の場合がほとんどで、自覚症状がほとんどない。しかし、放っておけば血糖値の高い状態が恒常化することになり、知らぬ間に糖尿病や心筋梗塞を引き起こし、死に至るケースも少なくないという。

 

◆ドカ食いがもたらす血糖値スパイク。痩せ型の人もなり得る

 

血糖値スパイクになり得る要因は、運動不足による筋肉の低下・睡眠不足によるホルモンバランスなどがあるが、一番の要因となるのが、ドカ食いをはじめとする食習慣の乱れにある。

 

基本的に食事をとらなければ血糖値の上昇は起こり得ないが、例えば空腹の状態で一気に炭水化物を摂取すると、身体は一気に糖質を吸収することになる。

 

朝ご飯を食べず、飢餓状態でランチを迎え、大盛ラーメンを搔っ込み、座ってコーヒーを嗜む……。一見、至福の時間にも見えるが、このサイクルは血糖値の観点でいうと望ましくない。

 

ここまで“糖尿病”・“高血糖”というキーワードがちらついたが、血糖値スパイクになりえる人は肥満体系で大食いタイプの人だけではない。あるマスコミの実験で、通常体系の10人の男女に対し、食前食後の血糖値を図ったところ、なんと10人中7人が血糖値スパイクだったという結果もある。

 

「例えばダイエットを頻繁にする方の場合、体重の面では標準だったとしても、栄養を取らなかったことで内臓脂肪が溜まってしまっているケースもあります。また、1日1食しか食べない人、朝ごはんを食べない人も、飢餓状態の身体にいきなり食事を入れることになり、高血糖状態を引き起こします。

 

加えて、筋肉量が少ない人も危険です。筋肉はブドウ糖を取り込むことで血糖値を調整してくれる役割がありますが、筋肉量が減少することでブドウ糖を取り込む場所が少なくなり、血糖値を調節する力が低下してしまいます」(泰江氏、以下同じ)

 

◆「自分は大丈夫」と思わず、迷ったら病院へ

自覚症状がなく、いつの間にか進行してしまう血糖値スパイク。食生活やライフスタイルを改善しないと、糖尿病だけでなく、動脈硬化・心筋梗塞・癌・認知症の危険性などもあることが、研究により明らかになってきた。

 

いち早く血糖値スパイクに気付き、なおかつ予防するためにはどんな方法をとるべきか? 泰江氏は以下の様に語ってくれた。

 

「まずは診療を受けること。食後に眠気・だるさといった症状に襲われたとしても、もしかしたら違う病気かもしれないので、自分で判断しないでください」

 

血糖値スパイクの診療では主に、糖負荷検査という手法がとられる。糖を摂取した時の血糖値の上昇具合を調べる方法で、食後30分・60分・90分・120分に分けて正確な血糖値の推移を測ることができる。通常の健康診断では食前の血糖値しか測られていないケースが多いため、“自分は大丈夫”と過信しないことが大事だ。

 

また泰江氏が指摘したとおり、血糖値スパイクは、食事・運動・睡眠を改善することで予防にも繋がる。食事であれば、PFC(タンパク質・脂質・炭水化物)バランスを考えた食事をとり、朝ごはんはしっかり食べる。早食い・ドカ食いをやめて、野菜からゆっくりと食べることで、血糖値の上昇を緩やかに保つことができる(目安は15分間食べること)。

 

運動も、強度である必要はなく、食後のランチに数10分程度身体を動かすだけでも効果は見込める。“食後30分は運動してはいけない”とよく言われるが、散歩などの強度であれば食事直後でも問題ない。

 

◆どーーしても、ドカ食いしたくなったら?

ただ飽食のこの時代、近くのコンビニで炭水化物以外を探すことの方が困難なくらい、誰でも手軽に血糖値を上げられる手段が揃っている。筆者もだが、ストレス解消のためにドカ食いを止められない人もいるはずだ。最後に、ドカ食いが許されるケースは何があるかを尋ねてみた。

 

「大前提として強調しますが、健康面でドカ食いは推奨しません。ただ、普段の食事に気を付け、定期的な運動を行ったうえで、2週間〜1か月に1回の贅沢としてドカ食いをするくらいであれば、ギリギリ許容できる範囲だと思います。

 

運動も“前の日に2時間走ったから大丈夫”ではなく、日ごろの習慣に取り入れることが重要。筋肉から出る活性物質は血糖値の上昇を抑える効果もあるので、まずは生活習慣を見直すことから始めてください」

 

頻繁なドカ食いによる代償は大きい。誘惑に負けそうになっても、長期的な健康を考えて適度な節制を心がけたいところだ。

 

<取材・文/FM中西>

【FM中西】

広告・ゲーム・出版を経て、現在はフリーの編集・ライターに。アニメ/ゲーム/アングラ等、ポップorサブカルチャーを浴びていたい。最近の目標は早起きと減量。友人とともに『ぽぷかる研究所』を細々と運営中