夏が来た。気象庁の3カ月予報では、今夏6~8月の平均気温は、全国的に平年より高い予想となり、月ごとで見ても、全国すべての月で平年より高くなるようだ。
35度以上の猛暑日も多くなるとの予想に、熱中症が心配される。どのように対策すればいいのか、「熱中症からいのちを守る」・「いのちを守る水分補給」(2冊とも谷口英喜 評言社)の著書があり、熱中症に詳しい谷口英喜医師に、この夏を乗り切る知恵を聞いた。
暑熱環境を避ける・水分補給をしっかり
「熱中症対策の対策の柱は暑熱環境を避けることと、水分補給をしっかりすることです」と谷口医師。暑熱環境とは熱中症のリスクのある環境を指す。とはいえ、暑熱環境を完全に避けることができたり、いつでも水分がとれるのなら、誰も熱中症にならない。
暑熱環境に耐えられ、水分を蓄えられる体づくりが大事なのだ。
「体のがっちりしたアスリートとかスポーツ選手っていうのは、まず熱中症になりません。それをアマチュアが真似すると熱中症になる。体作りが違うわけです」
何が違うのか? 谷口医師は自律神経と筋肉だという。
「まず自律神経の切り替えが活発に行えるかどうか。自律神経には交感神経と副交感神経があり、このバランスで体温調節がうまくいきます」
気温が上がると、自律神経の働きで血管が拡張する。血流が増えて皮膚の表面から体内の熱が逃げ、さらに汗をかいて蒸発する時の気化熱で体温が下がる。
筋肉量を維持することが大切
自律神経がうまく働かないとこうした反応が鈍り、体温をあまり下がらず、熱中症になる。「また体の中の水分は4割が筋肉に貯まっています。体の水分を保つには、筋肉量を維持することが大事になります」
それには運動と食事が重要だ。
「タンパク質をとっても、それだけでは筋肉になりません。動かないとダメなわけですね。人間の筋肉量は40歳をピークに落ちていきますから、40代を過ぎたら自分の持っている筋肉を失わないようにしていくということが脱水症対策になるわけです」
運動といっても、ジムに通わなきゃいけない、ジョギングしなきゃいけないというわけではない。軽い散歩程度で大丈夫。
「座っている時間を少なくすることによって筋肉は維持できるんですね。筋肉は下半身に集中していて、下半身から落ちます。足腰を使う生活をしていれば、筋肉量はずっと維持できます」
一番簡単な筋トレは、電車やバスで立つことだ。
「立っていることが一番いい筋肉の保持なんですね。筋肉を保持できなくなったらもう立てないですから」
熱中症対策にはビタミンCとロイシン、タウリン
夏が始まった今、筋肉をつける上でまずは栄養だ。
「筋肉はタンパク質です。食事ではタンパク質を積極的にとって欲しい。タンパク質はアミノ酸からできていますが、中でもロイシンというアミノ酸が重要です。
ロイシンは筋肉の合成を促す効果が高いので、ロイシンを豊富に含む魚や肉をとってください。牛乳や乳製品、豚肉、大豆製品にたくさん含まれています」アミノ酸が体内に入っても筋肉を合成する時にはビタミンが必要だ。中でも重要な働きをするのがビタミンCだ。
「自律神経の働きを調整する機能もあり、血管を拡張させるためにはビタミンCが必要です」肉だけ食べていればいいわけではないのだ。さらに夏は汗をかく。汗をかいて失われた水・電解質・ビタミン類を補うことも意識する。
「パッと見が茶色い食事、唐揚げとか揚げ物中心の食事が一番熱中症対策には良くありません。料理はカラフルな方がいいですね。緑が入っていたり、赤や白が入っていたり、彩のある野菜が中心だと必要なビタミンやミネラルをとることができます」
特に何もしなくても、紫外線を浴びるだけで人は疲労する。紫外線から受けるストレスに対抗するため、体内のビタミンB群が失われる。ビタミンBが含まれる豚肉は積極的にとった方がいいだろう。
最近、注目されているのがタウリンだ。
「深部体温を下げる働きがあることがわかりました。暑さでの寝苦しさはもちろん、熱の調節能力を改善すると考えられます。タウリンは魚介類に多く含まれます。熱中症対策として、意識して食べるようにしましょう。
タウリンを含むドリンク剤も多いので、食事でとれない時は利用してもいいと思います」タウリンもビタミンCも水に溶けるので、魚介類の冷たいスープやブイヤベース、お味噌汁などの汁物がいいかもしれない。
塩信仰はやめて!
熱中症になったらタダの水や牛乳はダメ
熱中症対策=塩飴と考え、何かというと塩飴をなめる中高年が多い。