GW明けは“五月病”に称されるように、心身の不調が起きやすい。そのひとつに“ストレスによる下痢”がある。いわゆる過敏性腸症候群の下痢型の状態だ。出勤途中や会議前に突然起こる便意や腹痛。まずはきちんと検査を受けよう。
【ストレスは増悪因子】
脳と腸の関係は非常に密接だ。通常、消化管の動きは、脳の視床下部が指令を出している自律神経によってコントロールされている。
ところが緊張や不安など強いストレスで視床下部の情報伝達が乱れると、場違いな場面で腸が活発に動いてしまう。下痢や腹痛が起こるのだ。
しかし、胃腸病に詳しい松生(まついけ)クリニック(東京・西国立)の松生恒夫院長は、「ストレスは最大の増悪因子だが、直接の原因ではない」と話す。
「もともと急性胃腸炎などを起こして、腸の過敏な状態を作ってしまっている。素地に“内臓知覚過敏”があるのです」
心よりも腸の機能の問題で起こるという。
【自己診断は危険】
ただし、第一に他の病気による症状でないのか、大腸内視鏡など検査での確認が重要。
「自己診断で過敏性腸症候群と決めつけるのは非常に危険です。大腸がんやクローン病が混ざっていることがある。血便が出ないタイプの潰瘍性大腸炎の可能性もあります。どれも症状が似ているので要注意です」
過敏性腸症候群は腸に検査で確認できる病気がないのに、下痢や便秘を繰り返すのが特徴。しかし、診断基準では症状が6カ月以上続いていないと診断がつけられない。
「実際、半年以上続く本当の過敏性腸症候群の患者さんは少ない。気にし過ぎると、そのストレスが誘因になります」
【朝食は出社後に】
では、内臓知覚過敏による下痢や腹痛、どう対処すればいいのか。
「症状を抑える薬では、即効性のある『イリボー錠(商品名)』が非常によく効きます。ただし、男性のみの処方薬なので、女性には漢方薬や整腸剤を処方します」
朝の出勤途中、突然、便意をもよおすので快速や急行の通勤電車に乗れない人もいる。
「内臓知覚過敏は、食物の刺激でも症状が現れます。不安な人は朝食を食べずに早く出勤して、会社に着いてから朝食を取ることをすすめます」
また、これから暖かい季節になるが、おなかを冷やすのも悪い。半身浴などで温める習慣をつけるといいという。
「神経質やきちょうめんな人に起こりやすいと言われるが、性格はあまり関係ない。症状が出たら薬で抑えていれば、そのうちに不安もなくなり、内臓知覚過敏も改善していきます」
【内臓知覚過敏を疑う症状】
★突然、便意や腹痛が起こる
★突然起こる便意は下痢、又は下痢と便秘が交互にある
★出勤途中や会議などの時におなかの調子が悪くなる
★排便をするとおなかの調子が改善する
★午前中におなかの調子が悪い
★休日はおなかの調子がいい
※検査で胃腸に異常がないのに上記のような症状がある