写真はイメージです Photo:PIXTA© ダイヤモンド・オンライン
60代に突入すると、これまで若いと言われてきた男性も一気に老け込んでしまうことがある。
人生100年時代において「おじいちゃん」と呼ばれるにはまだ少し早く感じる60代。40歳に見える、と嬉しい社交辞令を言われるか、80歳に間違われて一足早く『おじいちゃん化』するか…中年以降の見た目年齢の別れ道は、一体どこにあるのか。
60代以降も若々しく生きる秘訣を、『60代からの見た目の壁』(エクスナレッジ)の著者で、医師の和田秀樹氏に聞いた。(清談社 吉岡 暁)
60歳を過ぎると大きくなる外見の差
「60歳を過ぎると、同じ年齢でも若く見える人と、そうでない人の差が大きくなります。
若く見える人は、実年齢より10歳はおろか20歳くらい若く見える人も珍しくありません。医療の現場にいると『同じ年齢でもこんなに見た目が違うものか?』と驚くことが少なくないのです」
そう話すのは、『60代からの見た目の壁』(エクスナレッジ)の著者で、老化についての著書を多数発表している医師の和田秀樹氏だ。和田氏によると「見た目年齢」が老けている人には、ある特徴があるという。
「実年齢よりも老けて見える60代の患者さんに食生活を尋ねると、明らかにたんぱく質不足であることがわかりました。皮膚にシワが目立っていたり、体全体がしぼんだような印象を受けたり、見た目年齢が高い患者さんは、栄養バランスが悪く、とりわけたんぱく質が足りていなかったのです」
高齢になると食が細くなり、栄養は不足しがちになる。その上、昨今の健康ブームによって、ヘルシーな食生活を意識しすぎると、必要な栄養価が足りなくなってしまうのだ。
「粗食にしたほうが健康に良い、と考える人も少なくありませんが、実は見た目年齢に『粗食』は逆効果な場合もあります。ここで言う粗食とは、朝はご飯に味噌汁、納豆、漬け物。昼は蕎麦かうどん、夜は焼き魚と野菜の煮物のようなイメージです。
こうした食生活が『健康によい』と信じている人も多いと思いますが、粗食を続けると、見た目年齢を上げることに繋がる可能性があるのです」上に挙げたようなメニューは、一見するとヘルシーで栄養バランスも整っているように感じるが、たんぱく質が圧倒的に不足しているのだと和田氏は言う。
「コレステロールや血圧を気にして、極端に減塩したりカロリー制限をしたりと、数値にこだわりすぎると『見た目年齢』が上がってしまいます。コレステロールは動脈硬化などの原因になると避けられがちですが、実は体にはなくてはならない物質。
免疫細胞を作る材料になるので、無理に下げると免疫力が低下し、病気にもなりやすくなります。健康を意識することも重要ですが、たまにはステーキを食べるとか、自分の好きなものを我慢せずに食べることが、若々しさを保てる秘訣なんです。
特に老けたくないなら、肉は積極的に食べたほうが良いでしょう」
食生活だけでなく、男性を老けさせる大きな要因には、年齢とともに社会との接点が薄くなっていくことも関係しているようだ。
「定年退職した途端、一気に元気が無くなって老けてしまった…という話は、よく聞きますよね。老けを加速させないためには、男性ホルモンを減少させないことも重要です。
特に男性は仕事がなくなると、社会との繋がりや出世欲、性欲などを一気に失ってしまうパターンが少なくない。仕事をしていないと人と会う機会そのものが減るので、身なりにも気を使わなくなります。こうなると若返る必要性すら感じなくなり、一気に見た目年齢は年老いてしまいます」
定年後の“家に引きこもり状態”は、老化を防ぐためにも絶対に避けるべきだと和田氏は指摘する。「家に閉じこもっていると、人に会うことがどんどん億劫になり、日々の意欲自体も衰えます。ジムや散歩すら行かなくなり、刺激がないので脳は衰え、外見だけでなく脳の老化も進んでしまうという悪循環に陥るのです」
40代に見える60代の人に共通していること
恐ろしいことに見た目が老けることは、脳の老化に繋がる可能性もあるのだ。老化を防ぎ、60代以降も若々しさを保つためにはどうすればいいのだろうか。
「まずは、食生活の見直しです。質素になりすぎず、たまにはガツンとしたステーキでも食べてみましょう。また日常に少し“非日常”を取り入れる大切です。
自分が楽しめる新しいことに挑戦して、意識的に刺激を取り入れましょう。今は美容医療も発展し、男性のアンチエイジングも進化していますから、美容やファッションのジャンルに興味を持つことも、見た目年齢においては大切です。
見た目が変化すると、鏡を見たときにやる気が出て、人と会ったり新しいことにチャレンジしたりする意欲も生まれてきます」また、若返りの秘訣である男性ホルモンを活性化させるためには、「年甲斐もなく」と恥じることなく恋愛を楽しむ余裕も必要だという。
「女性は高齢になっても友人や家族と繋がる機会が多く、もともと美意識が高い人も少なくないので見た目年齢を保てるのですが、男性は『モテたい』と思わなくなると、一気に老けます。
『いい歳をしてモテたいなんて恥ずかしい』という価値観の人が日本には多いですが、外国人などを見ても、若々しい男性は異性への関心を失いません。人生100年時代ですから、60歳で新たな恋や人生がスタートしたとしても遅いなんてことはないはずです」
大切なのは何歳になっても、若々しく、かっこよくありたいと願う意識なのだ。またイキイキした見た目には、老後のお金の使い方も少なからず影響してくる。
「『老後が心配』と貯金ばかりして、多くのお金をキープしている人がいます。
確かに何歳まで生きるのかは予測がつかないので、できる限り貯金を減らしたくないという気持ちもわかりますが、実は要介護になっても寝たきりになっても、意外にたくさんのお金はかかりません。というのも介護保険が受けられるというだけでなく、寝たきりになれば娯楽にお金を使うこともできませんし、食事にもお金を使う必要がなくなるからです。
見た目を気にするのであれば、ファッションや美容などに元気なうちにお金を使ってほしいと思います。60代なのに40代に見える人に共通しているのは、自分が楽しめることにお金を使っているということ。趣味でも美容でも恋愛でも、自分が夢中になれることに時間やお金をかけている人は、いつまでも若々しいのです」人生を謳歌することが、なによりもアンチエイジングになるようだ。