冷たい飲食の摂り過ぎ、寝冷え、食あたり(食中毒)などからお腹を壊し、下痢を起こしやすくなる。排便異常には重篤な病気が隠れている場合がある。油断せずに“危ない下痢”を見極めることが重要だ。
【嘔吐・腹痛は要注意】
口から入った食べ物は主に小腸で消化・吸収が行われ、残った水分が大腸で搾り取られるように吸収され、大便が固形化されていく。この大腸の働きに何らかの原因で異常が起こると下痢になるのだ。
平塚胃腸病院(東京・西池袋)の佐藤健副院長は、「夏は冷たい飲食や寝冷えなどでお腹が冷えて下痢が起こりやすい。が、怖いのは命にも関わる食中毒。
下痢に吐き気(嘔吐)や強い腹痛を伴うようなら、すぐに内科や胃腸科を受診すべきです」と忠告する。
食中毒で起こる下痢は、腸管で増えた細菌やウイルスを排泄させるための体の防御反応。下痢止め薬を使わないで排泄を促すことが鉄則だ。
【血便は危険な症状】
お腹の冷えによる下痢は、自律神経のバランスが崩れ、腸管の働きが異状になることが原因。ストレス・緊張で起こる過敏性腸症候群の下痢も自律神経への影響だ。
「過敏性腸症候群なら排便をすると腹痛や腹部の不快感が治まるのが特徴。ある状況になると症状が現れるので、だいたいの人は自覚できると思う。この場合は市販の専用薬を服用する対応で構わない」(佐藤副院長)
ただし、下痢に血液や粘液が混じっていることがあれば、ただちに受診が必要。危険な腸疾患の可能性があるからだ。
佐藤副院長は「疑われるのは、潰瘍性大腸炎やクローン病。大腸がんならけっこう進行している恐れがある」と警告する。
【脱水症対策が重要】
お酒の飲み過ぎなど暴飲暴食による下痢は誰でも経験があるはず。脂肪の多い食品、激辛食品、甘味剤(キシリトールなど)、硬水のミネラルウオーターなどの摂り過ぎも下痢の原因になる。
いずれにしても家庭で対応できる普通の下痢であれば、下痢止め薬を服用し、冷やし過ぎないスポーツドリンクや麦茶、湯ざましなどで水分補給を十分に行う脱水症対策が重要になる。
「食べ物は吸収されないので逆に腸に負担をかける。脂ものは避けて、クズ湯やお粥など薄味でアッサリしたものを摂る程度がいい」(佐藤副院長)
普段からお腹の弱い人の下痢予防の対策としては、ヨーグルトなどの乳酸菌食品や野菜(食物繊維)を毎日摂り、常に腸の働きや腸内細菌を整えておくこと。いまの時季はお腹を冷やさないように、就寝時は腹巻きなどを着けるなどの心がけが大切だ。
佐藤副院長は「腹痛などの症状がなくても下痢が5日も続くようなら受診するように」と話す。
■病院で受診すべき危ない下痢
★便に血液や粘液が混じっている
★38度以上の高熱を伴っている
★排便しても強い腹痛が繰り返し持続する(しぶり腹)
★吐き気・嘔吐を伴う
★急に1日に5回以上、排便に行く状態になった
★下痢が5日以上続いている
★海外旅行から帰国後の下痢
※佐藤副院長の話を基に作成