適応障害というと若い人の病気だと思いがちかもしれませんが、決してそんなことはありません。
最近では、40~50代の“引きこもり”が増えていることもニュースに取り上げられるほど。職場での責任も大きくなり、若い頃とは違ったストレスに悩まされる時期でもあり、特に注意が必要な年代と言えるかもしれません。
今回は、適応障害について、厚生労働省の「みんなのメンタルヘルス~適応障害」から見ていきましょう。
■うつ病の前段階として現れることも
適応障害になっている人は、大体人口の1%程度だと言われています。
しかし、たとえば末期がんを患った人の適応障害有病率は16%以上だと言われており、強いストレスがかかる状況では適応障害になりやすいようです。また、適応障害だと診断された人の40%以上が、5年後にはうつ病などの診断名に変更されています。
■どんな原因でどんな症状がでるのか
適応障害というのは、簡単に言えば、“ストレスが原因となって、行動や心の面で、社会生活が送りにくくなること”を指します。
このストレスというのは非常に定義が難しいものです。ある人にとっては何でもない事柄であっても、別の人にとっては社会的な生活が難しくなるほど大きなストレスになってしまうことがあります。
起きる症状は、抑うつ気分が続く、めまい、過度な汗、動悸などです。また、涙もろくなったり、過剰に何かを心配したり、神経が過敏になったりすることもあります。行動面では、無断欠席や無謀な運転、喧嘩、物を壊すなどの症状がみられることもあります。
適応障害の場合、ストレスの原因から離れることで徐々に症状に改善がみられます。たとえば、職場のストレスが理由で起きている場合、勤務日は手が震えたりめまいが起きたりしますが、休日には症状が軽くなることがあります。
うつ病の場合、ストレスの原因から離れたとしても気分が改善されることが少ないですから、この点で、うつ病と適応障害は違います。
ただ、上でも述べたように、適応障害は“うつ病の前段階”として出ることもあります。適応障害のような症状が出ていても、うつ病や統合失調症の症状が出ていた場合、病名としてはそちらが優先されます。
■治療方法はどんなものがあるのか
適応障害の場合、ストレスの原因となっている物事から距離を置くのが基本の対策です。仕事が原因であれば休職や転職をする、などです。もちろん、いつでもこの方法がとれるとは限りませんが、有効な方法です。
ほかに、ストレスに対しての適応力を高める、つまりストレスの原因となる物事の受け止め方を変えていくというアプローチも有効です。これは“認知行動療法”と呼ばれるものです。
“今起こっている問題”と“体に起きている症状”を、医療関係者と本人が理解し、どう向き合っていくかを考えるものです。
最後に、薬物による対処方法もあげておきましょう。不安や不眠などに対してはベンゾジアゼピン系の薬、うつ状態に対して抗うつ薬を使うこともあります。しかしこの方法はあくまで“対症療法”であって、根本的な解決にはなりません。
仕事のストレスが原因だとわかっていても、容易に休職や転職などできない、という場合もあるかもしれませんが、体を壊してしまったら元も子もありません。薬による対症療法などで当面はしのぎつつも、やはり環境を変えるのが一番だと言えるでしょう。