油にはさまざまな種類がある。取りすぎると脂肪の蓄積につながるものも……(写真はイメージです)Photo:PIXTA© ダイヤモンド・オンライン
最近スーパーなどで、さまざまな種類の食用油を見かけるようになりました。ひと昔前までは、油といえば「太る」「体に悪い」などのイメージがあって悪者扱いされていましたが、最近では「健康に良い食品」としても注目されるようになりました。
そこで今回は、油の種類と栄養についてお伝えします。(管理栄養士 岡田明子)
三大栄養素の1つ「脂質」は
体の中でどんな働きをする?
栄養素としての油の分類は「脂質」です。そもそも脂質の役割は何でしょうか。
脂質は私たちの健康を維持するために大切な“三大栄養素”の1つです。体の細胞は細胞膜に包まれていますが、その細胞膜の輪郭を維持しているのが脂質です。
また、体の中で脂質が最も多く存在しているのは脳です。脳の約65%を脂質が占めていて、脳内の伝達物質をつかさどることも分かっています。
脂質は体温維持や肌や髪を潤す役割も担っているため、私たちにとって、良い油脂を体内に取り入れることは、とても大切なことなのです。
油脂の性質は、脂肪酸の種類によって異なります。脂肪酸とは、脂質を構成する主成分で、さまざまな種類があります。
「脂肪酸」は大きく分けて2つ種類ごとの性質を把握しよう
脂肪酸は大きく分けて「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2つです。そして不飽和脂肪酸の中には、「多価不飽和脂肪酸」と「一価不飽和脂肪酸」があり、更にそこから、DHAやEPA、αーリノレン酸、オレイン酸などに分類されていきます。
上手に油を取り入れるために、まずその油脂が持つ性質を把握することから始めましょう。
【飽和脂肪酸】
常温では固体です。取り過ぎると、血液中の中性脂肪やコレステロールが増加してしまいます。蓄積されると体脂肪になるので、摂取量には注意が必要です。
肉の脂身、バター、ラード、乳製品、ココナッツオイル、MCTオイルなどに多く含まれています。
健康やダイエット、美容効果があるといわれ流行したココナッツオイルやMCTオイルは飽和脂肪酸の中でも「ラウリン酸」を多く含んでいることが特徴です。ラウリン酸は「中鎖脂肪酸」に分類される脂肪酸で、分解や代謝が高く、すぐにエネルギーになるので健康効果が期待できます。
しかし、たくさん取れば良いというものでもありません。取り過ぎには注意しましょう。
【不飽和脂肪酸】
常温では液体で、エネルギーや細胞膜の材料として使われます。体内に溜まりにくく、余分な中性脂肪やコレステロールを減らす効果も期待できます。さらに細かく分類すると、大きく分けて3つあります。
1 多価不飽和脂肪酸のオメガ3系列
中性脂肪の低下や抗アレルギーなどの働きがあります。体内でつくることができないため、健康のためにも意識して取りたい油です。シソ油、亜麻仁油、えごま油、青背の魚(サバ、サンマ、アジなど)の脂に多く含まれています。
2 多価不飽和脂肪酸のオメガ6系列
子供の発育に欠かせない油と言われていますが、最近では、取り過ぎ傾向にある油なので、摂取量には注意が必要です。スナック菓子や大豆油、胡麻油などに多く含まれています。
3 一価不飽和脂肪酸
体内で作ることができ、エネルギーや細胞膜の材料として使われます。酸化しにくく安定しており、長期保存が可能なので調理に使いやすいのが特徴です。オリーブオイル、菜種油、ヒマワリ油、米油などに多く含まれています。
どの種類をどのくらい取ればいい?
現在では、飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸の割合を、3:3:4の割合で取るのが望ましいとされています。普段料理に使う油はオリーブオイルや菜種油などの不飽和脂肪酸を中心にして、肉や乳製品はたまに取る程度にすると、摂取バランスが取れるはずです。
1日の摂取量は大さじ2~3杯が目安ですが、脂身の多い肉、揚げ物や脂っこい料理が好きな方は、取り過ぎている傾向があるので、一度ご自身の食生活を見直してみましょう。
料理に使う食用油脂以外にも、食品には油脂を多く含んでいるものがあり、知らず知らずのうちに脂質を取り過ぎていることもあります。加工食品やファーストフードには特に多く使われていますので注意が必要です。
【油脂を多く含む食品】
穀類 パン、クロワッサン、カップ麺
乳類 牛乳、チーズ、アイスクリーム
菓子類 チョコレート、ケーキ、ポテトチップス、ビスケット
調味料 マヨネーズ、ドレッシング、カレールウ
毎日の食事に欠かせない油を上手に取り入れて、健康な毎日を送りましょう。