コラーゲンというと美肌効果のイメージが強い。しかし近年、関節痛、糖尿病、高血圧対策などに役立つ可能性があることが分かってきた。専門家に聞いた。
「そもそもコラーゲンを摂取してもきちんと体内に吸収されるのか? 無駄なんじゃないか?」と思っている読者が多いだろう。各効能について触れる前に、まずはその疑問に答えよう。
城西大学薬学部医療栄養学・真野博教授によれば、コラーゲンが加水分解されたコラーゲンペプチドは、「新しい栄養素」として今注目を集めているという。
実は、コラーゲンはそのままの形では吸収されない。コラーゲンにはプロリンやリジンといったアミノ酸が豊富だが、これらは水酸化(ヒドロキシル化)されていて、体内でほかのタンパク質の合成の材料にもならない。
「ところが、コラーゲンペプチドの“代表選手”であるプロリンとヒドロキシプロリンは特殊なアミノ酸で、2つがつながった『ジペプチド』は非常に切れにくく、ペプチドの形で体内に吸収されます。
実際、コラーゲンを食べると血液中にジペプチドが出現します。これまでジペプチドが何者で、どんな働きをするか知られていませんでしたが、近年、特別な細胞を活性化することが分かってきたのです」(真野教授)
つまり、コラーゲンを摂取すれば、“体にいい効果”が期待できるということ。研究でもそれが表れている。では、具体的に紹介しよう。
■関節痛
39~65歳の32人を2群に分けて、一方にコラーゲンを1日10グラム、13週間取ってもらったところ、6割が「膝関節症がよくなった」と答えた。プラセボ群は8割が「変化せず」だった。
「ジペプチドが骨芽細胞や軟骨細胞を活性化し、健全な軟骨や骨となる。膝関節痛がひどい人に、というより、予防として役立てればいい」(真野教授)
■糖尿病
マウスを使った実験だが、コラーゲンペプチドをヒト換算して3グラム与えたマウスと、そうでないマウスに、経口グルコース負荷試験(血糖値を調べる試験)を行ったところ、コラーゲンペプチドを与えたマウスの方が血糖値の上昇が低かった。
「ジペプチドが腸管に存在する酵素DPP-4の働きを阻害します」(摂南大学理工学部生命科学科・芳本忠教授)
DPP-4はインスリンの分泌を弱め、2型糖尿病を引き起こす。コラーゲンがDPP-4の働きを阻害するということは、2型糖尿病のリスクを下げるということだ。ちなみに、現在、化学合成したDPP-4阻害薬が2型糖尿病の治療薬として使われている。
■高血圧
「ジペプチドが血圧上昇に関係するACEという酵素を阻害し、さらに血管の弾力性を高める。2つの理由から、高血圧が改善すると考えられています」と言うのは、「新田ゼラチン」ペプチド事業部の小泉聖子氏だ。
ヒト換算して1日15グラムのコラーゲンを与えたラットと、そうでないラットを比較した実験では、コラーゲンを摂取したラットは血圧上昇が抑制されるだけでなく、血圧を正常値まで減少させた。
コラーゲンはサケの皮や牛スジ、レバーなどに含まれている。吸収率の高いコラーゲンペプチドとして健康食品も販売されている。女性だけに独占させるのはもったいない